ポスト若冲⁈ SEITEI「蘇る! 孤高の神絵師 渡辺省亭」展へ急げ。

  • 文:小長谷奈都子

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「牡丹に蝶図」 個人蔵 1893年

幕末から明治を生きた絵師、渡辺省亭(せいてい)を知っていますか?時代が移り変わる新たな胎動のなか、精緻な筆致と洒脱なセンスで独自の作風を開拓。日本画家として初めてパリ万国博覧会に派遣。マネやドガなど印象派の巨匠に大きな影響を与え、日本美術の救世主といわれるA.F.フェノロサや岡倉天心にも認められていた天才画家——それが渡辺省亭です。画壇に属さず、弟子を取らず、ひたすら画業に専念した省亭。重要作品の多くが海外の美術館に所蔵されていることからも、長らく日本美術史から忘れ去られていた存在でした。今年4月2日は省亭の100回忌。これを機に、現在、大規模な回顧展が、近世から現代まで美術品全般を取り扱う加島美術にて開催中。
展示作品は約30点。自然界の一瞬をドラマティックに捉え、切れ味のよい筆さばきとデザイン性に満ちた構図からなる作品は、いまなお新鮮な魅力に満ちています。特に、ほかの追随を許さなかったほどの流麗な花鳥図は省亭の真骨頂。

また、この展覧会の大きな特徴は、ガラスのショーケースに入らない露出展示ということ。直に作品に対峙することで、作品本来の質感や繊細な筆さばきまで感じ取ることができるのです。またとない貴重な機会、必見です! 肉筆画のほかにも、省亭が原画を描き、濤川惣助(なみかわそうすけ)が手がけた七宝作品や、省亭が編集主任を務めた雑誌『美術世界』などが並びます。
さらに、本展に合わせて、東京国立博物館をはじめとする都内複数の美術館で、各所蔵作品を展示中。次なるブーム到来を予感させる、知られざる天才絵師、省亭。その世界観をいち早く堪能するべく、美術館巡りに出かけませんか?


・東京国立博物館:〜4月16日(日)
・山種美術館:〜4月16日(日)、4月22日(土)〜6月18日(日)
・松岡美術館:〜5月14日(日)
・根津美術館:4月12日(水)〜5月14日(日)
・迎賓館赤坂離宮:一般公開中(公開日程はHPで要確認)

「雨中桜花つばめ図」 個人蔵

「桜下美人図」 個人蔵

渡辺省亭展の公式図録兼書籍。加島美術や連動美術館の出展作のほか、国内外の主要作品を収録し、省亭の多方面にわたる仕事までカバーした決定版。各会場ほか全国書店にて発売中。¥2,160(東京美術刊)

SEITEI「蘇る! 孤高の神絵師 渡辺省亭」展

会期:〜4月9日(日) *会期中無休
開催場所:加島美術 東京都中央区京橋3-3-2
開廊時間:10時〜18時
観覧料:無料
TEL:03-3276-0700
www.kashima-arts.co.jp
www.watanabeseitei.org