内田鋼一さんほど、多彩なやきものをつくる作家はめずらしい。カップやボウルなど日常のうつわから、抹茶茶碗などの茶道具、花器、さらにはやきものにとどまらず家具や鉄のオブジェまで、創作は広がりを見せます。しかも、どんなジャンルのどんな技法でも、内田流に捉えて昇華する、圧倒的な技量と豊かな感性。優れて現代的で魅力的な佇まいのうつわの数々は、食器という実用の美を超えて、モノとしての存在をやわらかに醸し出しています。そんな多面的な創作活動を一望できる展覧会「いろいろ」が開かれます。

内田さんはモノの魅力とは何か、ということをとことん追求しているように思います。自身が惹かれるモノを集めた古道具のコレクションに見られる、年月に洗われて、用途をはぎ取られた、慎ましくも美しいモノたち。そうしたコレクションは、大胆でいて繊細な造形とテクスチャーが共存する作品づくりに反映されています。

もう一つ、内田さんの創作を支えているのは、アジア、アフリカ、ヨーロッパなど、世界各地の窯場を渡り歩き、職人として仕事をした経験です。その土地のかたちとは何か。土と技術と産業の結びつきを体験したことから、どんなジャンルを手掛けても、最適な表現手法を選び取ることができるのでしょう。

今回の個展では、数百点に及ぶ作品が展示されるとのこと。合わせて、会場に内田さんが製作したバーカウンターを設け、2日間限定のUchida’s Barも開催されます。

時代も地域も縦横に旅するバックグラウンドから生み出される、豊かで大きな作品世界を楽しんでください。（佐藤千紗）