藤田嗣治の全貌を知る、生誕130周年を記念した回顧展が府中市美術館で開催中です。

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    近年、再評価の声が高いアーティストに画家の藤田嗣治(1886-1968)がいます。1920年代のパリで「乳白色の肌」をした裸婦像を描き、エコール・ド・パリの寵児といわれた藤田。一 方で世界的にファシズムが台頭するなかで日本に帰国、軍部の依頼に応えて太平洋戦争中に戦争画を描き、戦後、その責任を画壇から激しく批判され、失意のなかで日本を去った藤田。晩年はフランスに帰化し、レオナール・フジタとして異郷の地に没した彼の、画業の全貌に迫る回顧展 『生誕130年記念 藤田嗣治展-東と西を結ぶ絵画-』(府中市美術館、12月11日まで)が、 いま開かれています。

     展示は1900年代の作品から1960年代まで、大作を含む国内外の秀作約110点で構成。初期から最晩年まで、彼の画業の全体像に迫るバランスのよい構成となっています。エコール・ド・パリ時代の藤田の裸婦像は、独特の硬質なエロティシズムを感じさせ、いま見てもやはり魅力的です。また、パリ郊外を描いた初期の鄙びた風景画や、1930年代にパリを離れて南米を旅したときに描いた強烈な色彩の絵画、圧倒的迫力を見せる戦争画、また晩年の宗教画など、つねに新しい絵画を追求した藤田嗣治の芸術の軌跡がそこにあるのです。

    藤田がパリ画壇の寵児と呼ばれた1919年から1929年という時代は、考えてみれば未曾有の犠牲者をだした第一次世界大戦の終結から、ヨーロッパだけではなく世界全体を混乱へと巻 き込んだ世界経済恐慌までのまさに「アプレ・ゲール」の10 年間なのです。今日では当たり前のように使われる「グローバリゼーション」という言葉があります。少し飛躍した言い方ですが、 藤田嗣治という画家は、この言葉の意味を1920 年代に早くも一身に体現した、最初の国際的日 本人アーティストだったのかも知れません。 (赤坂英人)

    生誕130年記念 藤田嗣治展 -東と西を結ぶ絵画-

    開催期間:~ 12月11 日(日)
    開館時間:10時~17時(入場は16時30分まで)
    開催場所:府中美術館 東京都府中市浅間町1-3
    観覧料:一般 ¥1,000(¥800)/高大生¥500(¥400)/小中生¥200(¥160)
    休館日:月曜日
    http://foujita-fuchu2016.jp/