ルールにとらわれず、自由な感性で花を束ねる。

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    Creator’s file

    アイデアの扉
    笠井爾示(MILD)・写真
    photograph by Chikashi Kasai
    倉石綾子・文
    text by Ryoko Kuraishi

    ルールにとらわれず、自由な感性で花を束ねる。

    篠崎恵美Megumi Shinozaki
    フラワークリエイター
    1981年、栃木県生まれ。「edenworks」主宰。一般的な装花・造園のほか、ミュージックビデオやCDジャケット、広告のアートワークなどで空想的な世界観を表現。2016年、週末限定のフラワーショップ「edenworks bedroom」を渋谷元代々木町にオープン。

    http://edenworks.jp

    色とりどりの可憐な花を使いながらも、その世界観はどこかアンニュイでシュール。フラワークリエイターの篠崎恵美は彼女ならではの独特の表現で、ミュージシャンやファッションデザイナーなど、第一線で活躍するクリエイターから支持されている。キャリアのスタートは、イングリッシュガーデンを擁するアンティークショップ。師匠らしい師匠はいなかったから、その庭に息づく植物や自然の営みに、花のありようを教わった。

    「装花で心がけているのは、それぞれの花の個性を独創的に表現すること。花の世界にもルールやタブーはありますが、しょせん、人間がつくったもの。師匠がいなかったからこそ、固定観念に縛られない創作活動を続けることができているのかもしれません」

    だから、篠崎のアレンジは自由だ。和の草花に熱帯の植物、アーティチョークの花にアマランサス。あらゆる気候帯、ジャンルを超越した植物が、ひとつの花器に生き生きと混在する。彼女のインスピレーション源は写真集や映像作品、音楽など。敬愛する作品から感じたインプレッションを、花を使って自分なりに再構築する。 

    昨年オープンした週末限定のフラワーショップ「edenworksbedroom」にも、そんな審美眼が貫かれている。ベッドルームをイメージしたという店内には真っ白なベッドが置かれ、その上にはくすんだローズピンク、褪せたベージュなど、20種以上の個性的な花々が透明のガラス器に飾られている。ベッドルームは人生の三分の一を過ごし、幸せな夢を見る場所だ。同じように愛と夢にあふれた花のインスタレーションスペースとして、ベッドルーム以上に幸せな空間はないと考えた。 

    このスペースから生まれた篠崎の代表作が、ドライフラワーをパッケージにした「FLOWERPACK」。店舗で生じる生花のロス(売れ残り)を、廃棄するのではなく別の姿に蘇らせられないか。余った花、捨てられる花にも宿る生命力を形にしたい。そんな、花のライフサイクリングに光を当てた作品だ。 

    ドライフラワーやブリザーブド、花のフォルムを活かしたペイント作品など、「別の形に生まれ変わった花々を並べるスペースの展開を考えている」という篠崎。花器に活けた花と同様、路面に落ちた花や茎、葉の一枚一枚さえも瑞々しく愛おしい。草花のもつ根元的な美しさを伝えるため、表現の可能性を模索する毎日だ。

    works

    edenworks bedroom では、特別な場ではなく、日常を彩る花やブーケを提案する。一般向けのワークショップも不定期に開催。

    ウィンドウのディスプレイなど大規模な装花にも定評あり。祝福やお祝いの気持ちを、ボックスに詰めたカラフルな花で表した作品。

    ※Pen本誌より転載