気鋭イラストレーター158人が独自の視点で描いた、“新しい漱石”の姿。

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    矢吹申彦「ボクの頭を叩くセンセイ」

    西洋文化が輸入され、封建制度による絶対的な主従関係から人々が解かれた明治時代。いまでいう近代化によって価値観が変わるとともに、文学の在り方も、段々と様相を変えていきました。

    ヨーロッパの翻訳小説が多数出回り、それを吸収した新しい手法が生まれ、文体や題材が自由度を増したこの時代は、次々と新しい作家が出現した日本の文学における黎明期といえます。その作家のなかでも近現代文学の旗手といえるのが「夏目漱石」ではないでしょうか。漱石が処女作『吾輩は猫である』を著した時代は、事実を克明に描写する自然主義がメインストリームだった頃。それとは相反する空想と風刺、自我を見事に織り交ぜた『吾輩は猫である』は、日本の文学に新しい概念を与えることとなりました。

    2016年は夏目漱石の没後100年にあたる年。それを記念し、東京・銀座のクリエイションギャラリーG8で行われるのは、東京イラストレーターズ・ソサエティによる漱石をテーマにしたグループエキシビションです。この東京イラストレーターズ・ソサエティは、ベテランから新進気鋭までが名を連ねる東京をベースに活動するイラストレーターのハブとなっており、今回はそこから158人の作家が出展します。

    展示される作品群は、神経衰弱を患った漱石の混沌とした内面を描いたもの、漱石の半生を一枚で表現したもの、ポップなグラフィックや超抽象的なシンプルなものなど多種多様。

    既成の概念を打ち破り、金字塔を打ち立てた漱石。それに倣うように、これまでとは違う漱石の姿を描いた作品が集まる「158人の漱石」は、きっと我々に新しい漱石の姿を見せてくれるはずです。(大隅祐輔)


    ミヤギユカリ「漱石と猫」

    西口司郎「心・こころ」

    展示ポスターに採用されたのは水沢そらが描いた漱石。

    TOKYO ILLUSTRA TORS SOCIETY PRESENTS
    『158人の漱石 百年後ノ吾輩、こゝろ、それから……』

    開催期間:~10月6日(木)
    開催場所:クリエイションギャラリーG8
    東京都中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F
    TEL:03-6835-2260
    開催時間:11時~19時
    日曜・祝日休館
    入場料:無料
    http://rcc.recruit.co.jp/