Amazonで、ファインアートを買ってみませんか?

  • 写真:平岩 享
  • 文:青野尚子

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オンライン通販最大手のAmazonが、いよいよファインアートの領域へ本格進出してきました。ネットでアート作品を買うことが、ついに当たり前の時代となっていくのでしょうか? 気になるその仕組みとは??

アート初心者に優しい、Amazonという仕組み

Amazonファインアート(www.amazon.co.jp/fineart)にアクセスすると、版画や写真などの現代美術作品やギャラリーの写真が並んでいます。クリックすると本や雑貨と同じように、詳細画面が出てきます。ジャンル、作家、ギャラリーごとに検索することもできます。もちろん、価格も明記されています。

小山登美夫ギャラリーを主宰する小山登美夫さんは、Amazonによって客層を広げられるのではないか、と考えてこのAmazonファインアートに参加しました。
「ギャラリーにもお客さんは来てくれるけど、美術を知っている人しか来ないんです。Amazonならばアートを買ったことのない人、ふだんギャラリーに来ない人にも敷居が低いんじゃないかな、と思いました」
小山登美夫ギャラリーを主宰する、小山登美夫さん。取材は渋谷ヒカリエの8/ ART GALLERY/ TOMIO KOYAMA GALLERY、桑田卓郎展会場にて行われた。
Amazonファインアートはビギナー向け、と考えている小山さん。Amazonも小山さんも、そのためにいろいろと工夫しています。価格を明示しているのはそのひとつ。いわゆる通常のギャラリーではどこに作品の価格が表示されているのか、初めての人にはわからないことが少なくありません。また、アート作品はオークションで数百億円という価格がつくようなものから数千円のプチプライスな作品まで値段の幅が広く、適正価格がつかみづらいこともあります。
「Amazonで気になる作品をいくつかチェックしていくと、なんとなく値段の感覚がわかってくると思います」と小山さん。小山さんは、Amazonファインアートには10万円以下の値段で買えるエントリーレベルのアートを多く出品しています。数千円、数万円という価格帯なら初めての人でも買いやすいはず。アートを買う、という新しい習慣がぐっと現実的になってくるのです。

Amazonファインアートのもうひとつの利点は、ギャラリーでは緊張して冷静に判断できないという人も、自分の家でゆっくり考えることができることです。
「Amazonなら家でPCの画面を見てじっくり検討できます。また、一度にたくさんの作品を比較できるのもいいですね。数軒分のギャラリーの作品を見られるわけですから、実際に移動しなくてもほかのギャラリーの作品と比べることができる。自宅で落ち着いて考え、それから実物を見にギャラリーに行くのもいいと思います。ギャラリーでも店頭にない作品を写真で見てもらうのはよくあることですし」

ユーザーにとっては、Amazonという“ブランド”があるのも安心材料のひとつでしょう。Amazonファインアートでは、きちんと審査した上で参加ギャラリーを決定していますから、取引においてトラブルの起きる余地も少ないといえます。

「おすすめ」から、世界が広がる。

実際の商品詳細ページ。
小山登美夫ギャラリーから販売された、デヴィッド・リンチ(David Lynch)の『I go to my House  僕は家へ帰る』(2012年、リトグラフ、63.0×93.0 cm)¥432,000
Amazonで買い物をしたり気になる商品をチェックすると「おすすめ商品」が出てきます。小山さんはこの機能にも期待しています。
「たとえばデヴィッド・リンチのDVDを検索すると、彼のドローイングが『おすすめ商品』のところに出てくるかもしれない。画集をチェックすると、その画家の作品が出てくることも考えられます。そうすると、アートとは縁のなかった人にも『こんなものもあるんだ』ということがわかってもらえる。美術ファン以外にも間口が広がるのでは、と思います」
ユーザーにとってもアートだけでなく、関連書籍やDVDなどが一度に見られるのは便利な機能です。作品や作家についての資料があれば、アートを見るのももっと楽しくなるでしょう。

また、どきどきしながら買ったアートをどうやって飾るか、考えるのも楽しいもの。賃貸住宅などで壁に釘が打てない場合、小さな絵やオブジェなら本棚や飾り棚に、大きめの絵や写真は床に立てかけて置くといった飾り方があります。Amazonでは絵を飾るためのピクチャーレール、釘、大工道具なども販売されています。Amazonファインアートでは額つきで売られているものもありますし、作家やギャラリーによってはどんな額をつければいいのか、相談にのってくれるところもあります。購入から飾るところまで、ひとつのサイトで済ませることができるのもAmazonのメリットです。
小山登美夫ギャラリーが紹介している若手の作家、佐藤 翠(Midori Sato)の『Jewelry rings』(2013年、アクリル画、91.5×73.0 cm)¥237,600
同じく佐藤 翠(Midori Sato)の『Necklace with sapphire pendant』(2013年、アクリル画、50.5×40.0cm)¥129,600
ユーザーにとってメリットがたくさんあるAmazonファインアートですが、アーティストから見るとどうなのでしょうか。
「デビューしたばかり、あるいはデビューから数年しか経っていない若手アーティストにとって、この場はチャンスだと思います。キャリアの浅いアーティストはギャラリーや美術館で作品を展示する機会が少ないのです。もちろん単独で作品集を出すこともあまりないのですが、たとえば日本のアートシーンを紹介するような単行本から検索してきてくれるかもしれない。こうやってお客さんに見てもらい、アーティストの側から積極的に発信できる場になればいいな、と思います」と小山さん。
まだあまり知られていない作家の作品は概してお手頃なもの。その後成長して有名になれば、あっという間に手が届かなくなることもあります。有望な若手にアクセスできるAmazonファインアートは、ユーザーにとってもおトクなのです。
小山さんにAmazonファインアートのお薦めの使い方を聞いてみました。
「アートフェアやギャラリーで実際の質感を見て、気になる作品があったらAmazonファインアートで同じ作家のものを探してみる、というのがお薦めです。アートは基本的に一点ものなので同じものはありませんが、サンプルとして見ることができますから」

小山さんはこれまでの日本のアートシーンは狭いところにとどまっていた、と感じています。
「Amazonというツールで、これまでのアートのネットワークとは違うところからアートに興味をもつ人が来てくれるのではないかと期待しています」
ユーザーとアーティストの出会いの場を広げるAmazonファインアート。アートと暮らす、新しい生活が待っています。(青野尚子)

アマゾン ジャパン www.amazon.co.jp/fineart TEL:0120-914-826