グランドセイコー、常識にとらわれず挑戦する両者の邂逅。

  • 写真(ポートレート):外山温子(CROSSOVER) 写真(時計):岡村昌宏(CROSSOVER)
  • 文:篠田哲生

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“名店出身”という背景に安住せず、ワクワクするような挑戦を続けたいという須賀洋介さん。彼にとって伝統とは、崩すためにある。

須賀洋介(SUGALABO Inc. 代表、シェフ) 1976年名古屋市生まれ。フランスと日本で修業を重ね、再度渡仏。20代前半でジョエル・ロブション氏と出会い、その才能を認められる。パリ、ラスベガス、ニューヨーク、台湾などで活躍。独立後、2015年に自身のラボラトリーSUGALABO Inc.を設立する。

世界的シェフ、ジョエル・ロブションの片腕として、世界中で活躍してきたシェフ須賀洋介さん。彼は一昨年に独立し、日本へと戻ってきました。

「レストランの厨房というのは、実は精密時計のようなものです。厨房には多くのスタッフがおり、それぞれが明確な役割をもって作業しています。コースの料理を最適なタイミングで出すために、お客様の様子を確認し、各スタッフの作業状況も確認しなければいけません。たとえば残り3分で仕上がる料理がある場合、どのタイミングでスタートするのか、その間にできる作業は何か? そんなことを考えながら、チーム一丸となって動いています。その際には時計は見ませんね。完全に身体にしみついている体内時計で計算しています。時計内部のパーツがチクタクという一定のリズムで動いていくように、私たちもチーム内の完璧な調和によって、料理をつくっている。だから厨房=精密時計なのです」

須賀さんのラボ『SUGALABO』は2015年春にオープン。料理を提LABO(実験室)という名称が示す通り、新しい食の研究開発の場としても活用しています。

「“食”というコンテンツをどういう形で発信していくかを考えています。異業種とのコラボレーションも積極的に進めているのもその一例なんです。たとえば航空会社の機内食を開発したり、自動車会社とイベントを行ったりしているのは、日本を代表する企業がもっている強い信念から刺激を受けたいからです」

そんな彼にとって、日本を代表する時計メーカーといえば、セイコーです。
「セイコー=精巧。装飾性よりも機能性を重んじるところに、日本的な精神を感じる。日本的とは〝和〞という言葉に集約されます。和には穏やか、仲がよい、調和などの意味があります。日本にはモラルと正確さと安心感があるので、心地よく仕事ができる。そういう精神性を、セイコーという企業とグランドセイコーから感じるのです」
パリやラスベガス、ニューヨークなどで活躍してきた須賀さんだからこそ、〝日本的である〞ことも大切な要素となっているのです。

「グランドセイコーらしい高品質さはそのままですが、ブラック&シャイニーなケースやダイヤルで遊び心を加えていますね」。セラミックベゼルには24時間表記を加えており、先端を赤くしたGMT針と組み合わせることで視認性もしっかり確保している。カッティングを施すことで面を輝かせる針とインデックスは、セイコースタイルに合わせた仕上げであり、伝統的な美しさを加える。
「ケースバックから精密な機械が見える様子は、まるでオープンキッチンのようですね。細部までていねいに仕上げていることがわかりますし、ここを見ただけでこの腕時計の品質の高さがわかります」。搭載しているムーブメントは、Cal.9R16。巻き上げたゼンマイがほどける際に発電した電気でクオーツ回路を動かし、正確な時刻を表示するスプリングドライブ式を採用している。

基礎があるから、 崩すことができる。

『SUGALABO』は、最も予約が取れないレストランと言われている。清潔感のあるステンレスを多用し、直線的なデザインで構成されたオープンキッチンは、まさにラボ(実験室)である。

「私が在籍していたジョエル・ロブションはとても大きな規模でしたが、若くしていろいろな経験をさせてもらったことに感謝しています。私は本来飽きっぽい性格なのですが、常に新しいチャレンジができたので、モチベーションを保つことができました。その気持ちを忘れず、SUGALABOでもチャレンジを続けたいですね。新しいことを始めるのはプレッシャーもかかりますが、それを楽しみたい。意識的に常識を崩していくことが、いまは大切だと思います」

それゆえSUGALABOの業態はかなりユニーク。紹介制&完全予約制で、電話番号も明らかにせず、長期休暇をとってスタッフと地方に出掛け、現地のおいしい食材や伝統工芸を探す旅もしているそう。このような業態のお店の場合、いわゆる“星”を得ることは難しくなるが、須賀さんはその手の名声には魅力を感じていない。

「飲食業界の常識とは別に視点をもった、インフルエンサーになりたいんです。料理のジャンルにも固執はしません。フレンチでも和食でもいいのです。すべての質を高めることは当然ですが、大切なのはお客様やパートナーに、ここに来てよかったと思ってもらうこと。だからこそ、自分が正しいと思ったことに対しては、先入観なしにチャレンジしたい。最後にごはんが出てきたっていいじゃないですか(笑)」

「時計は好きですよ。TPOに合わせてつけかえますね」という須賀さん。グランドセイコーのイメージを覆した大胆な新作にも興味津々の様子。

常識を崩すこと。それはグランドセイコーに課せられた使命でもあります。1960年の誕生以来、高い次元で腕時計の実用性を追求してきたグランドセイコーは、セイコースタイルと呼ばれるデザイン理念を継承してきました。しかし革新なくして進化はありえない。今年、ブラックセラミックスとチタンのコンビネーションケースを採用したのは、大きな挑戦です。

「この腕時計は、グランドセイコーのイメージを崩した、とても面白い時計ですよね。いままでのグランドセイコーは、機能的という印象が強かったのですが、より嗜好品としての魅力が加わってきましたね。海外で仕事をしてきてわかったのは、日本人って“こうあるべきである”という固定観念に縛られがちなんです。実際、僕自身もロブション氏からは『もっと日本風にやってもいい』と言われ続けてきました。素晴らしいモノをつくるために同じことをやり続けることは、必ずしも正解にはならないのです」

グランドセイコーが半世紀以上かけて積み上げた伝統には、もちろん敬意を払うべきですが、新しいチャレンジに対しても敬意を払いたい。
「私が基準としてるのは、ワクワクできるか? それは楽しいか? 新しいチャレンジにつながるか? それだけです。念願の独立を果たし、自分の理想に向けて自由に楽しめる環境が整いました。だからいまはとにかくワクワクしていたいんです」

グランドセイコーの新作「ブラックセラミックス リミテッドコレクション」を手にしながら須賀さんは語ります。
「この腕時計にも、同様のワクワク感がありますよね。ブラックセラミックスのシャイニーな輝きには、遊び心が詰まっています。いまをアクティブに生き、時代を動かしている人のための腕時計って感じですね」

世界を巡りながら多くを学び、その経験を新しいチャレンジへと結びつけようとする須賀洋介さんの信念と、新しいグランドセイコーが、まさに共鳴した瞬間でした。(篠田哲生)

シャイニーな艶感と、機能性のアンサンブル

「グランドセイコー ブラックセラミックス リミテッドコレクション スプリングドライブ GMT(SBGE037)」世界を舞台に活躍するための必須機構GMTを搭載。美しさと機能性の両面を楽しめる。自動巻き(手巻き付き)スプリングドライブ、ジルコニア・セラミックス+ブライトチタン、ケース径46.4㎜、パワーリザーブ約72時間、クロコダイル革ストラップ、世界限定500本。¥1,242,000 ※国内では、グランドセイコーマスターショップのみでの取扱いです。

写真家の作品が、ストラップになる。

日本を代表する写真家の作品を使ったキャンペーンが全国のグランドセイコーマスターショップで展開中。9月30日までに「グランドセイコー ブラックセラミックス リミテッドコレクション」を購入した人の中から、抽選で各135人に、それぞれの作品をプリントしたオリジナルバンドをプレゼント。

上写真:右は荒木経惟氏作品コラボレーションバンド。左が森山大道氏作品コラボレーションバンド

※「グランドセイコー アヴァンギャルド」とキャンペーンの詳細は、www.seiko-watch.co.jp/gs/avant-garde

●問い合わせ先/グランドセイコー専用ダイヤル TEL:0120-302-617(9:30~21:00、土日祝日は17:30まで)