話題の新作発表会から、アップルの目指す未来を考えました。

  • 写真・文:Pen編集部

Share:

9月9日にサンフランシスコで行われ、世界中が注目したアップルの新作発表会。はたしてアップルの新作は、どのようにわたしたちの暮らしを刺激するのでしょう?

会場となったのは、伝説的プロモーターの名を冠したビル・グラハム・シビック・オーディトリアム。

9月9日の発表から2週間以上が経ち、いよいよ本日25日よりiPhone6Sが発売されました。先んじて公開された新しいiOS9のダウンロードはもちろん、新しいiPhoneを発売日に手にするために予約をした方も多いことでしょう。そして、この記事を新しいiPhoneで読んでいる方もいるかもしれません。

さて、このたびPen編集部も招待をいただき、サンフランシスコで開催されたアップルの発表会にお邪魔してきました。当初予定されていた飛行機が変更になるなど、波乱含みのスタートでしたが、おかげで搭乗とともに眠り込んでしまい、目覚めることのないままサンフランシスコへ。
他誌のみなさんといっしょのツアーだったものの、ホテルへの移動時にようやく顔を合わせることになりました。専門誌の編集者やジャーナリストの方が多いこともあり、移動のバスのなかでは、明日の発表に向けそれぞれの予想や情報の交換で大盛り上がり。
入国時も、どの会社とのミーティング? と聞かれ「Apple」と答えると無愛想だった管理官もおもわず笑顔をみせてくれたし、ホテルで読んだ地元紙ももちろん一面は明日の発表について。世界が待ち望んでいる、そんな発表会なのです。

会場を待つ、各国のジャーナリストたち。このドアが開くのか、はたまた違うドアのほうが先か。
開場後は、みな記念撮影をしつつ、ティム・クックの登場を待ちます。

さて発表日である翌朝、ホテルのロビーでごった返す人々を見て、世界中からこの発表のために報道関係者が訪れるんだなと、あらためて数の多さに驚きました。
ホテルからバスで会場へ。バスのなかも、あーでもないこーでもないと各国の言葉で議論しあう人々。興奮は止みません。とはいえ10時からのスタート。まだまだ時間はありますが、みんな元気です。時差ぼけとかないんでしょうか。
開場を待つ姿は、まるで子どものようにワクワクしており、あっちのドアのほうが早く開くんじゃないか、こっちのドアのほうが早そうだと、そこでも謎のリーク(?)合戦が。

ティム・クックの登場で会場は沸き立ちます。まるでロックコンサートのよう。
編集Yが実際に腕に巻いたカフ。この画面はエルメスモデルのみの限定仕様に。

ティム・クックの登場とともに、さながらロックコンサートのように発表会がスタート。さて発表の内容を…といってもみなさんすでにご存知だと思うので、それぞれの製品について触れた所見をお伝えします。

今回の発表でトップバッターだったのは、AppleWatch。WatchOS2(こちらも昨日よりリリースされましたね)とともに発表された、エルメスとのコラボレーションモデルに会場はどよめきました。が、発表終了後の実機のお試し会で、もちろん多くのメディアは真っ先にiPhoneへと向かいます。ということでじっくり触れることができました。どこかのメゾンと組んで……という噂はかねてよりあり、いずれ登場するとは思いつつも、それがまずエルメスだったというのは、意外なようでいて非常に順当な展開だったと言えるのではないでしょうか。

クラフツマンシップへのこだわりでは他の追随を許さないエルメス。そのレザーベルトというと、やはりこれまでのAppleWatchの着用とは違う高揚感が。二重巻きの腕時計を個人的にいつかほしいなと思っていましたが、ここでドゥブルトゥールの名で登場。しかし、わかってはいたものの平均的な男性の腕にはちょっと細すぎるかなと。やはりカフが男性の腕にはぴったりです。エルメスは腕まわりのアクセサリが充実してるので、この雰囲気はファッションアイテムとしてもうれしいです。実はいまAppleWatchを使用しているのですが、ベルトはラバーのスポーツタイプ。これはこれで気に入っているのですが、同じフェイスでもずいぶん印象が違うんだなと改めて実感しました。アップルの統一感あるプロダクトとは違う表情に、新しさを感じさせます。

ライフスタイルを刺激する、アップルのこれから。

指の動きで定規が出たり、ととにかくかゆいところに手が届く仕様。
絵心さえあれば、どんな表現も可能です。絵心さえあれば…

さらに、出る? 出ない? と噂のあったiPad Pro。実物を見るとやはり大きい! ただそこに目を向けすぎると、この製品の本当の魅力を見逃してしまいます。帰国後に友人と話すと「ソファに寝転がってアニメを見るにはデカすぎるんだよな」とぼやいてましたが、そういう使い方をするものじゃない!とわたしは思います。(腕が鍛えられていいかもしれませんが)

プレゼンテーションでは医療の現場での活用を見せていました。動画やアニメーションなどのビジュアルで説明、共有が簡単にできるようになる。イメージの共有というのは、仕事のうえで悩みの種の一つでは? iPad Proはそれをスムーズにしてくれる、まさにプロユースのアイテムといえるでしょう。ApplePencilは、デザイン関係者、建築関係者などには重宝しそうなアイテム。さまざまな意見もあるようですが、これはAppleの現場で欲しい!という声が多かったのではないかなと思うくらい、スタッフの方たちが使いこなしていました。最後に発表されたiPhone6Sは、きょうから店頭に並ぶ実機で試していただくのがベストです。なによりも触ってはじめてわかる高機能。わたしのiPhoneが5ということもあり、形は近いもののずいぶんと違う携帯のよう。

発表会でPCが発表されなくなった(個人的にはMacBook Airの新型を待ち望んでいたのですが)のは、もはや完成されたプロダクトとアップルが考えているからではないでしょうか。そしてiPhoneも完成されたプロダクトとなり、iPadもこれでひとつの完成をみせたといっていいのかもしれません。

実機のテストに、各国の報道陣が一挙に群がる。
写真や動画を楽しむのにうれしい高画質。ここまでの写真はiPhone5で撮影したもの。はやくiPhone6Sにしたい。

発表では関係各社やテストユーザーも登場し、その姿はまるでラッパーのマイクリレーのよう。そうしたプレゼンテーションにAdobeが登場することは既定路線ですが、Microsoftの名がモニターに登場した時には驚いてしまいました。そこから見えるのは、成熟した企業となったアップルの姿です。スティーブ・ジョブスというやんちゃなスーパースターは残念ながら去ってしまったけれど、昨年の発表会以降、次々とプレゼンターが変わりながら新しいアイデアを発表し、わたしたちを楽しませてくれる。アップルに限らず、業界自体が成熟化していることを示しているのかもしれません。アップルがiPhone以降に発表するのは、どれも情報や生活のプラットフォームとなるもの。彼らがつくろうとするのは、プラットフォームを通じてライフスタイルを刺激することなのです。

思わずサーフィンをしたくなる美しい海辺の街、サンフランシスコ。アップルのスタッフたちはこの街で多くの時間を過ごし、サーフィンもするだろうし、美味しいコーヒーやパンを楽しみ、時には夜に贅沢をしてレストランにいくのかも。ジョブスのような神様はいないけど、海の向こうでわたしたちと同じように毎日を楽しみながら働いているひとたちがいまのアップルをつくっている。それがわかる発表でした。
驚くことに慣れてしまったわたしたちは、またiMacやiPhone、AppleWatchが初めて登場したときのような驚きがほしいと願ってしまいます。今回の発表でわかりやすい新作はありませんでしたが、やはり時代を先に進める新しいなにかがアップルにはある。すでにiPhone7の噂も流れ始めました。

はたして次なるアップルはなにを見せてくれるのか。ひとつの企業、ひとつのプロダクトがここまで気になるなんて、もはやなかなかありません。まずは新しいiPhone6S、その新たな可能性を楽しんでみましょう。(Pen編集部)