N˚21(ヌメロ ヴェントゥーノ)、世界が注視する最旬モード

  • 写真:江森康之
  • 構成・文:高橋一史

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語れる服 Vol.11 : ファッション界で評価が高い新時代ブランド「ヌメロ ヴェントゥーノ」のデザイナー、アレッサンドロ・デラクアが最新コレクションを解説します。

表参道にオープンした世界初旗艦店。

「ヌメロ ヴェントゥーノ」。1~3階までの3フロア構成。
イギリス人現代アーティストのダミアン・ハーストの代表作にインスパイアされた家具。
東京・表参道のランドマークである表参道ヒルズの近辺に2014年9月、「ヌメロ ヴェントゥーノ」がオープンしました。世界初となるフラッグシップショップです。外観はコンクリートの無機質なイメージですが、一歩中に踏み入れると、有機的な世界が広がっています。
「外から見ると日本的でクリーンな建物ですが、内装がイタリアの雰囲気になっています。大理石の床や家具を始めとする店内のディテールがイタリア的です。外観と内観の印象にコントラストがある点が気に入っています。ヌメロ ヴェントゥーノのファッションにも通じる考え方ですから」と、アレッサンドロ・デラクア。
春夏コレクションの前で、にこやかなデラクア。
一階にあるユニークなガラス棚(上段写真)は、有名なアート作品を彷彿とさせます。「その通り、ダミアン・ハーストのアートにインスパイアされた什器です。店の内装をやってくれたのは、古い友人の建築家のハネス・ペール。私のオフィスや自宅も彼に設計してもらいました。この店はモダンアートと中世のバロック調がミックスされています」。バロックにフォーカスした理由は何でしょうか?「私は南イタリアの出身で、そこはバロックの時代が色濃く残っている土地柄なのです。自分のアイデンティティを表す意味もあり、内装に取り入れました」。モダンアートとバロックアートといった対極の時代、対極の要素を混ぜ合わせる“コントラスト”表現は、ヌメロ ヴェントゥーノの服のデザイン哲学でもあります。次ページから、春夏コレクションを見ていきましょう。
襟と裾に別色生地を縫い合わせ、重ね着しているように見えるハイブリッドデザインのシャツ ¥37,000(税別)

着こなしのキーワードは、軽い服の“レイヤード”

ミラノコレクションのショー写真を集めたルックブック。
ミラノメンズコレクションで発表された今季コレクションは、リゾート感覚のリラックスしたカジュアルなスタイル。着こなしのポイントになるのは、インナーに着た丈の長いヌードカラーのタンクトップです。薄い上質な素材の服を重ね着(レイヤード)して、しかし重い印象にならないように短パンを穿いて崩しています。スポーティで軽快な気分で楽しむ、いまの時代らしいタウンファッションの提案です。
中世サラセン人プリントのナイロンブルゾン ¥103,000(税別)、同素材ショートパンツ ¥63,000(税別)
フード付きのアウターに短パンという、生地を揃えたセットアップスーツは、世界的なトレンドアイテム。上下をバラして自由に組み合わせてもよい便利な服です。
「ナイロン素材にプリントした生地のセットアップアイテムです。図案は実にイタリアらしいもので、中世にアラビアからイタリアにやってきたサラセン帝国(イスラム帝国)のサラセン人がテーマです。モチーフの一つ一つを小さくすることで、子供服のような若々しさを表現しました。リゾートバカンスで着る服のイメージです」
アイレットレースのシャツ 各¥91,000(税別)、ヌードカラーのタンクトップ ¥29,000(税別)
手工芸的なレースのシャツも、同様にリゾートエレガンスを感じさせる服です。「アイレットレースを用いました。こうしたレディス用の素材をメンズに応用するのが私のデザインの特長です。ただし、着たときの男らしい印象は大切ですから、裾だけにチェックのシャツ生地を取り付けて、あくまでも“シャツ”と呼べるアイテムに落とし込んでいます」。
彼が提案する着こなしは、ファッションショーでも行ったヌードカラーのタンクトップとの組み合わせ。「トップに短いものを、インナーに長いものを重ねてコントラストのあるスタイルを狙ってみてください」

デラクアお得意のニット、ギンガムチェックのパンツ

デラクアが手に持つTシャツ 各¥43,000(税別)
前のページに掲載しているチェックシャツと同じ生地のTシャツとパンツの軽やかさも見逃せません。このギンガムチェックは、今季のヌメロ ヴェントゥーノの代表的なモチーフでもあります。
「1950年代のイタリアを彷彿とさせる柄です。Tシャツはフロントだけにシャツ生地を使い、後ろ身頃はニット。Tシャツなんだけど、シャツでもありニットでもあるという、ハイブリッドな遊び心を入れたデザインです。この“ハイブリッド”という言葉もヌメロ ヴェントゥーノを物語るキーワードですね」
シャツ生地のパンツ ¥42,000(税別)
ロングパンツは、サイドを色違いのモノトーンで切り替えすことで、タキシードのような側章付きに見せたデザイン。
「クラシックな男性像をどのように崩していくか、その表現のために、軽いシャツ生地でスモーキングふうパンツを仕立てました」。風を通す極薄のクルーネックニット(下写真)もギンガムチェックです。そしてニットは、アレッサンドロ・デラクアが得意とするアイテムでもあります。
「80年代に仕事を始めたときニットウェアのデザイナーだった経験があります。いまでもニットが大好きで、ヌメロ ヴェントゥーノはイタリアでもトップクラスのクオリティを持つメーカーに製造を発注しています」
繊細で柔らかいジャカードニット ¥42,000(税別)

ストリート感覚のTシャツにも技アリ

サーファーTシャツ ¥33,000(税別)
次世代ブランドであるヌメロ ヴェントゥーノでは、スニーカーやTシャツなどストリート感覚のあるアイテムも充実しています。2015年春夏コレクションのテーマの一つが“50年代アメリカのサーファー”。このストーリーに基づくクールなサーフィンTシャツがこれです。
「私のデザインオフィスでつくり上げたグラフィックです。緑と水色の部分だけにプリントを施すことで、シャツ本体の地を生かして黒いシルエットの人物を形にしました」
ネオプレン素材のロゴTシャツ ¥39,000(税別)
ヨーロッパのモードブランドならではのテクニックと素材選びが見られるのが、ブランドロゴをフィーチャーしたこのTシャツ。
「素材は軽量でボリューム感のあるネオプレンです。一口にネオプレンといっても、これほど軽い生地はなかなかありません。内側がキャメル色になっているのも特長ですね。ロゴマークは、型に入れて浮き上がる加工をしています。内側にはコットンパッドを入れて形が保たれるように工夫しています」。着心地や耐久性にまで配慮した服づくりを行うのは、さすがベテランデザイナーの仕事といえるでしょう。
猿を手刺繍したTシャツ
キャリアが長い実力派デザイナーならではの凝ったTシャツをもう一点ご紹介しましょう。見事な刺繍ワークで猿を描き出したユーモラスな服です。
「イタリアでナンバーワンと言われる刺繍師に刺繍してもらいました。手刺繍ですから、猿の毛並みがよく表現されていると思います。何種類もの糸、プラスティック素材、スパンコールなどを使うことで表現できた図案です。日本画のように見えますか? とくに日本を意識したものではありませんが、着る人が自由に解釈して自分流に着ていただけることが望みです」

今季春夏のたくさんの服を、終始笑顔で解説してくれたアレッサンドロ・デラクア。自らがデザインしたアイテムへの深い愛情と、着る人あってこそのデザイン、という思想がよく伝わってきました。コレクションは表参道の直営店以外にも、ハイモードを取り扱うセレクトショップや百貨店などで展開されています。ぜひお近くの店で直接手に取り、“着てみたくなる”デザインの妙をお確かめください。(高橋一史)

アレッサンドロ・デラクア
Alessandro dell'Acqua
1962年、南イタリアのナポリ生まれ。80年代よりデザイン活動を始め、様々なブランドに携わる。96年、自身の名を冠した「アレッサンドロ デラクア」をスタート。のちにブランドを手放し、2010年に自身の誕生日からネーミングした「N˚21」を立ち上げる。「マーロ」や「ブリオーニ」のディレクション経験も持つ彼は、2014-15年より「ロシャス」のクリエイティブ・ディレクターにも就任。

ヌメロ ヴェントゥーノ

東京都渋谷区神宮前4-3-17

TEL:03-3746-0021
営業時間:11時~20時
不定休

問い合わせ先/ヌメロ ヴェントゥーノ TEL:03-3746-0021
www.shopiza.com