「GINZA SIX」に新レーベルの店もできた「ザ・ノース・フェイス」は、アウトドアの枠を超えた男の夢のフィールド!

  • 写真:宇田川 淳
  • スタイリング:鍛冶古 翔三
  • 構成・文:高橋一史

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最新と定番、どちらを選ぶ? Vol.03:常に進化を続け、アウトドアウエアのトップブランドであり続ける「ザ・ノース・フェイス」。プロのギアから日常着まで細分化された3つのレーベルにフォーカスします。

「GORE-TEX® Micro Grid Backer」を使った超軽量防水ジャケット「CLIMB LIGHT JACKET」¥32,400/ザ・ノース・フェイス(ザ・ノース・フェイス原宿店) スウェットニットベスト¥14,040/ユナイテッドアローズ(ユナイテッドアローズ 銀座店) Tシャツ¥20,520/エンハーモニック タヴァーン(スタジオ ファブワーク) パンツ¥31,104/レインメーカー

デザイン全般における考え方の一つに、「形態は機能に従う」というものがあります。この考え方は、ファッション(衣服)の分野にも当てはまります。たとえば、軍モノのユニフォーム。装飾を省き、徹底して実用性が追求された軍モノには、プロユースならではの機能美があります。ただしその美しさは、道具としての役割のみが考えられた結果ではありません。着る人に自信や誇りを与える、  “カッコよさ” も組み込まれているのです。

山岳地帯などの過酷な環境で活動するプロから、街の人々までを魅了する「ザ・ノース・フェイス」にも機能美が息づいています。本格アウトドアウエアは、愛用するアスリートの声を反映させつつ先端テクロジーを用いて商品開発されています。カジュアルスタイルの「ザ・ノース・フェイス パープルレーベル」や、仕事着にもなる新しいレーベル、「ザ・ノース・フェイス アンリミテッド」にも、都市生活に必要な機能がふんだんに盛り込まれています。今回の「最新と定番、どちらを選ぶ? Vol.03」では、上記の3つのレーベルに焦点を当て、それぞれのアイテムをご紹介します。


1. プロ御用達だから着たくなるスタンダード、「ザ・ノース・フェイス」
2. 旬の気分たっぷりのお洒落カジュアル、「ザ・ノース・フェイス パープルレーベル」
3. 都市が似合うクールなデザイン、「ザ・ノース・フェイス アンリミテッド」
4. 近年にますます盛り上がる人気、そこに隠された仕掛けとは?


●問い合わせ先
ザ・ノース・フェイス原宿店 TEL:03-5466-9278
ユナイテッドアローズ 銀座店 TEL:03-3562-7798
スタジオ ファブワーク TEL:03-6438-9575
レインメーカー TEL:075-708-2280

プロ御用達だから着たくなるスタンダード、「ザ・ノース・フェイス」

「CLIMB LIGHT JACKET」の袖口には高い防水性を物語る「GORE-TEX®」のマークが。
野外フェスにも持参したい、撥水性と防風性があり小さく畳めるウィンドブレーカーと、トレッキングで肌寒いときにも便利なフリースジャケット。左2点 ウィンドブレーカー「SWALLOW TAIL HOODIE」各¥17,280、右 フリースジャケット「MOUNTAIN VERSA MICRO JACKET」¥11,664
3層構造生地の「HYVENT™」を使用した軽量な防水シェルジャケット。ザ・ノース・フェイス独自の新技術「FUSEFORM」により、縫い合わせのない一枚生地の中に3種類の異なる織り目を実現。「FUSEFORM MOUNTAIN JACKET」¥45,360
インナーを取り外し、3シーズン着用可能なシステムジャケットは定番的な一着。襟の中にフードが収納されたビルトインフード仕様。バックパックは、背中の汗や蒸れを軽減する機能をもつ容量28Lのモデル。ジャケット「XXX TRICLIMATE JACKET」¥39,960、バックパック「CAELUS 28」¥19,440
「XXX TRICLIMATE JACKET」のインナーはMA-1型で、単体で着用可能。中綿は濡れても高い保温性を保つ「Primaloft」。
東京・明治通り沿いの「ザ・ノース・フェイス原宿店」。東京都渋谷区神宮前6-10-11 原宿ソフィアビル1階

ここにピックアップしたアイテムは、軽装の季節でも活躍するフード付きの定番的なアウター。トレッキングや野外フェスなどで肌寒いときや雨対策に便利です。着心地が軽い防水仕様のもの、畳んでコンパクトに収納できるもの、本格防水仕様に加え最新技術で生地が織られているもの、着方をアレンジして3シーズン着られるものまで、高い人気を誇るラインアップです。「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」らしさを最も感じる定番デザインは、肩と身頃が2ブロックに色分けされたアウターでしょうか。

アスリートが愛用する本格機能を有しながら、タウンファッションとしても見映えのいいデザインになっているのが同ブランドの実力。実は日本国内で正規展開している「ザ・ノース・フェイス」は、大半がスポーツウエアメーカー、「ゴールドウイン」による国内ローカライズのデザイン。カジュアルウエアの分野で世界屈指の高感度な日本のセンスによって生み出されているのです。サイズやフィット感も日本人体型に合っています。優れた企画力のこれらの商品の中には、アメリカの旗艦店で販売されているものもあります。

ザ・ノース・フェイスのコレクションには厳密な意味で “定番” と呼べるアイテムはなく、どれも細部が見直され、進化を続けています。アスリートとの関係性を深め、常に “本物” であろうとする姿勢が、多くのファンを虜にする秘密かもしれません。 


●問い合わせ先
ザ・ノース・フェイス原宿店 TEL:03-5466-9278

旬の気分たっぷりのお洒落カジュアル、「ザ・ノース・フェイス パープルレーベル」

プルオーバーパーカ¥34,560/ザ・ノース・フェイス パープルレーベル(ナナミカ マウンテン)、インナーに着たシャツ¥31,104、ショーツ¥35,424/レインメーカー、サングラス¥32,400/ザ・パークサイド・ルーム
パーカの袖付けには動きやすい仕立ての工夫が。
薄くしなやかな防水透湿素材「GORE-TEX®Packlite」を使用した定番デザインのマウンテンパーカ¥59,400
ショーツは、通気性のいいメッシュながら高撥水加工が施され、小雨程度なら弾くファンクショナルな服。Tシャツのモチーフは、ヨセミテ公園に住むフクロウ。ショーツ¥16,200、Tシャツ¥8,640
クライミングパンツを短くカットしたようなショーツの素材は、速乾性と伸縮性のある「COOLMAX」。コインポケットやキーリングも付き、バックポケットはスナップ留めで機能性バツグン。ショーツ¥15,120、リネン混のバンドカラーシャツ¥20,520
ヨットの帆に使われる防水性と耐久性の高い4層構造生地を用いたトートと、ザ・ノース・フェイスの古いアーカイブに着想を得た独特な三角形フォルムのバックパック。右 トート¥16,200、左 バックパック¥16,200
ザ・ノース・フィエス パープルレーベルをメインに扱う、東京・代官山の「ナナミカ マウンテン」。東京都渋谷区鶯谷町12-8

このレーベルのアイコニックな特徴は、織りネームが紫色なこと。その名の通りの「ザ・ノース・フェイス パープルレーベル(THE NORTH FACE PURPLE LABEL) 」は、先端のプロスペックに基づく「ザ・ノース・フェイス」とは目線が異なる、タウンユース向けのレーベルです。コーヒーを中心とするカフェ文化が広がり、ニュートラルな生活と服装を好む人が増えた現代の感性にフィットするコレクション。日本でしか購入できない(ネット販売も国内発送のみ)、“ジャパンプロダクション” の特別なレーベルです。

デザインディレクションしているのは、東京・代官山に店を構える「ナナミカ」。ザ・ノース・フェイスらしさを大切にしつつ、シーズン毎に “味のある” アイテムを送り出しています。デザイン発想の根底にあるのは、60年代〜80年代のブランド初期に生まれたアイテム群。たとえば素材では、「65/35ベイヘッドクロス」(=ポリエステル65%、コットン35%)などの古い時代にプロスペックだった機能を取り入れ、街中では必要十分な役割をもたせています。マウンテンパーカなどのように、ハイテク機能が加えられたアイテムもあります。

シンプルで洗練されたバッグ類の人気も高く、「ビームス」、「ジャーナルスタンダード」などの有力なファッションのセレクトショップは別注モデルも展開して好評を得ています。今季2017年春夏は70年代に原点回帰したアイテムが多めで、サイズの幅も広げたザ・ノース・フェイス パープルレーベル。いまこそ新たなファンを獲得しそうです。


●問い合わせ先

ナナミカ マウンテン TEL:03-5728-3266
レインメーカー TEL:075-708-2280
ザ・パークサイド・ルーム TEL:0422-41-8978

都市が似合うクールなデザイン、「ザ・ノース・フェイス アンリミテッド」

シャツ¥16,200、クラッチバッグ¥4,860/ザ・ノース・フェイス(ザ・ノース・フェイス アンリミテッド)、パンツ¥30,240/ウル(スタジオ ファブワーク)、サンダル¥56,160/アデュー(エドストローム オフィス)、時計¥2,305,800/アイ・ダブリュー・シー
ストレッチ性と撥水性のある生地のシャツは、各パーツが接着でつなぎ合わされたスムーズな仕上がり。襟下の穴はベンチレーション。
ソフトシェル素材のジャケットとパンツ。撥水加工が施され、各ファスナーポケットも止水仕様。シワになりにくく軽量で旅行に最適。ジャケット¥29,160、パンツ¥17,280
薄手でハリのある、「GORE-TEX® Paclite」2.5層構造生地を使ったコート。スーツの上に羽織れる大きめのカタチで、日常着としても、旅先の雨対策としても。各¥42,120
洗練された都会的なアクセサリー。バックパックは収納部が2層に分かれ、PCの出し入れに便利なビジネス仕様。キャップは「HYVENT™」素材で縫い目がシーリング加工された防水タイプ。キャンバススニーカーのアウトソールは「ビブラム社」製で、インソールは抗菌防臭加工付き。バックパック¥19,440、キャップ¥7,776、スニーカー ¥15,120
紙のような風合いの、デュポン社が開発した透湿・防水素材「タイベック®」を使ったトートと、撥水加工され、メッシュポケットで雨水も溜まらないバックパック。トート¥6,264、バックパック¥16,200 
2017年4月に誕生した話題の商業施設、「GINZA SIX」内にオープンしたショップ、「ザ・ノース・フェイス アンリミテッド」。東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 5F

いまや世界中の都会派メンズブランドが、「ファンクショナル(機能的)」をテーマにした服に夢中になっています。国ごとの距離が近くなったグローバル時代にふさわしい旅行着や、天候を気にせず着られる服が求められているのです。そんな中、今年2017年4月に東京・銀座にオープンしたニューショップは、こうした機能的アーバンウエアを中心とする、「ザ・ノース・フェイス アンリミテッド(THE NORTH FACE UNLIMITED)」。松坂屋の跡地に誕生した商業施設「GINZA SIX」内でも異彩を放つ、コンセプチュアルな品揃えです。

アンリミテッドは薄手で軽量で、シワになりにくく、雨風を防ぎます。小さく畳んで持ち運べ、洗濯しても乾きが早いため、荷物を最小限にしたい旅行者や出張の多い人に役立ちます。ジャケット、パンツ、コート、シャツ、カット&ソー、バッグ、帽子、シューズらのフルラインアップで、レディスも用意。色彩は黒、グレー、ベージュといった落ち着いたもので、スポーティながらシックな着こなしに対応しています。

ザ・ノース・フェイスのアンリミテッドコレクションが誕生したのは、2006年のこと。東京「表参道ヒルズ」内にオープンしたショップの限定アイテムでした。2013年の同店のクローズと共に一旦休止し、2015年に待望の復活を果たしリローンチしました。テクニカルなアプローチに満ちた都会的な服小物がずらりと並ぶショップは、ありそうでなかなかないもの。このために銀座を訪れる意義のある、スタイリッシュな店の出現です。


●問い合わせ先

ザ・ノース・フェイス アンリミテッド TEL:03-6280-6603
スタジオ ファブワーク TEL:03-6438-9575
エドストローム オフィス TEL:03-64275901
アイ・ダブリュー・シー TEL:0120-05-1868

近年にますます盛り上がる人気、そこに隠された仕掛けとは?

「ザ・ノース・フェイス」の始まりは、創設者ダグラス・トンプキンスがサンフランシスコに誕生させたマウンテンスポーツ用品専門店から。写真は店のオープニングの様子で、バイカー集団「ヘルズ・エンジェルズ」がセキュリティを務め、店内ではまだ無名だった「グレイトフル・デッド」がバンド演奏。(1966年)
ルーツを辿った近年のイメージブック、「IN THE CITY -SAN FRANCISCO-」より。(2011年)
「IN THE CITY -SAN FRANCISCO-」の1シーン。(2011年)
ニューヨークのヒップホッパーにも愛された1992年のダウンジャケット、「ヌプシ(Nuptse)」の復刻版を販売したPOP-UPショップのイメージビジュアル。撮影は小浪次郎。(2016年)
リローンチされた「ザ・ノース・フェイス アンリミテッド」のイメージビジュアル。(2015年)
アスリートへのサポートも、ブランドの根幹を成す重要な活動。写真は、次世代を担う若手ロッククライマー、中嶋徹。

アウトドアライフを愛する人のみならず、カジュアルウエア好き、ヒップホッパー、スケーター、モード好きまでを魅了する「ザ・ノース・フェイス」。その高いブランド力とファッション性の裏側には、アメリカで生まれたカルチャーを巧みに日本のマーケットに引き入れつつ、新たな価値を加えた「ゴールドウイン」の貢献があります。ここではあまり語られることのない彼らの活動と、広がった知名度の歴史をひも解きます。

かつて70年代半ば〜80年代初頭の日本で、アウトドアウェアを街中で着るスタイル、「ヘビーデューティー」がブームになりました。その頃に頭角を現したのが、1966年に設立された「ザ・ノース・フェイス」の輸入品ダウンジャケットでした。一部の人はブームが過ぎてからも、日常着にアウトドアウェアを取り入れました。その服を手がけていたのは、81年に国内ディストリビューターとなったゴールドウインです。日本市場での全権を任された彼らは、本国とは別の独自路線でマーケットを広げていきました。

ザ・ノース・フェイスが高感度なファッションアイテムとして認知されるようになったのは、90年代初頭〜半ばにアメリカの東海岸系(ニューヨーク系)ヒップホッパーが好んで着用してからでしょう。日本で「ナイキ」のスニーカー「AIR MAX」や、「カシオ」の腕時計「G-SHOCK」などが人気を集めた時代に、ザ・ノース・フェイスもストリート・アイコンになりました。この頃の服は現在、90年代音楽シーンの盛り上がりと共に一部の若い層にも注目され、たとえば吉祥寺のショップ「ジ・アパートメント」などで当時の古着を購入する人が増えています。近年の「コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン」、「シュプリーム」といったハイセンスなブランドとのコラボレーションにより、ファッションイメージが高まった側面も見逃せません。

アウトドアウェアと日常生活との結びつきに敏感な日本では、ショップでのイベントやブック製作などさまざまな仕掛けを行ってきました。ショップそのものでも2000年代には、大人の旅やライフスタイルに特化した2006年の「ザ・ノース・フェイス 表参道ヒルズ店(THE NORTH FACE OMOTESANDO)」(2013年閉店)を皮切りに、2010年、原宿に「ザ・ノース・フェイス スタンダード(THE NORTH FACE STANDARD)をオープン。都会派の人々へ向けた品揃えを打ち出しました。この流れは2017年の最新ショップ「ザ・ノース・フェイス アンリミテッド」に続いています。

昨年、設立50周年を迎えた彼らの次なる仕掛けはなんでしょうか? それは、アイテム構成のピラミッドの頂点に位置する、本格プロ仕様の「サミットライン」のリローンチです。ブランドのアイデンティティである “本物” に再び力を入れ、足場を固めようとしています。今夏の終わり頃からさまざまな仕掛けがスタートする予定ですから、ぜひご注目を! (高橋一史) 


資料画像提供:ゴールドウイン(ザ・ノース・フェイス)
www.goldwin.co.jp/tnf