旬の「スポーツミックス」を楽しむ、新作スニーカー(後編)

  • 写真:尾鷲陽介
  • 文:小暮昌弘

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過去の名作を復刻・アレンジした、レトロ調スニーカーが人気沸騰中。旬な着こなしとの相性も抜群です。

「ニューバランス」期待の新作は、英国製コートスタイルシューズ

男女を問わず、いま絶大な人気を誇るスニーカーブランドが「ニューバランス」です。1906年、アメリカのボストンで矯正靴をつくるメーカーとして誕生し、ブランド名は「履いた人に新しいバランス感覚をもたらす」として命名されました。いちばん定評があるのはランニングシューズですが、この夏の最新作「CT300」は、意表をついてテニスで使用するコートスタイルシューズ。「CT300」のオリジナルは1979年に発表されたモデルで、安定性とフィット性に優れたコートスタイルシューズとして、当時注目を集めた名品です。これを「メイド・インU.K.」モデルとして復活させたところも、ニューバランスファンには嬉しいポイントかもしれません。シンプルなデザインとカラーリングに、ニューバランスのクラフトマンシップと自信を感じます。色は白とネイビーの2色。どちらもカジュアルからモードまで似合う、オールマイティなスニーカーとして人気を集めるでしょう。「他の人と違うニューバランスを履きたい」と考えている方には、狙い目の一足といえます。
アッパーはナイロンメッシュとスエードのコンビネーション。あめ色のラバーが配されたソールも、クラシックな味わいを醸し出す。
ユニオンジャックのマークが「メイド・インU.K.」の証し。同ブランドでは、ランニングシューズ以外の英国製モデルがリリースされるのは珍しい。

80年代に登場した「ナイキ」の名品が、さらに進化。

「ナイキ」の中でも、いま街中を席巻しているモデルといえるのが、1987年に発売された初代「ナイキ エア マックス 1」。ナイキ独自のエアソールユニットを、かかと部分に見える形で搭載した記念碑的なランニングシューズで、復刻モデルが発売された昨年からこの夏にかけて、街でブレイクしたモデルです。これはそのモデルをさらにバージョンアップさせたもので、「ルナロン」と呼ばれるミッドソール素材とヒール部分の「エア」ユニットを融合させ、高いクッション性と快適な履き心地をもたらしました。アッパーにはジャカード素材が使われ、ランダムに入ったストライプに高いファッション性が感じられます。サイドの「スウッシュ」マークとソールは、「ブライトマンゴー」と呼ばれる鮮やかな蛍光色が使われ、ヘリテージなデザインに新しさを演出します。コントラストが利いたカラーリングは、エッジィーなモードスタイルにもマッチするのではないでしょうか。
高いクッション性をもつ「ルナロン」のミッドソールで、かかとに入った「エア」は、デザイン的なポイントになっている。
ジャカード織の素材を使ったアッパー。「スウッシュ」マークもプリントで入る。

80年代の名ランニングシューズを復刻させた「アディダス オリジナルス」

1984年4月の第3月曜日、世界中のランナーが集うボストンマラソンの日にデビューを飾ったのが、「アディダス ボストン・スーパー」です。歴史あるこのマラソンレースに出場する選手のために、当時の最新技術を使って開発された、アディダスを代表するランニングシューズといえます。これは当時のモデルを復刻させたもので、新しいカラーリングとなって、7月中に発売されます。ナイロン素材のアッパーには、洗い込んだスエードが組み合わされ、ヴィンテージな雰囲気を醸し出しています。シルバーのスリーストライプに入った「BOSTON SUPER」の文字が、わざとかすれた雰囲気でプリントされるというこだわりもスニーカーファンを唸らせるに違いありません。「EVA」と呼ばれる軽量で弾力性のあるミッドソールに入った赤のラインは、実にファッショナブル。同じ赤を使った、かかと部分のパイピングの美しい仕上げにも老舗の矜持を感じます。ランニングシューズの普遍的デザインを見事に表現した名スニーカーといえます。
走るための機能をいちばんに考えたソールのデザインだが、赤、黒、灰色の3色を使ったカラーリングが洒落ている。
ナイロンやスエードの風合いにも、ヘリテージモデルらしい味わいが感じられる。シルバーの3本線に入ったモデル名もヴィンテージ調のかすれた仕上げ。

旧作を大胆にアレンジした、「プーマ バイ ミハラヤスヒロ」

スポーツシューズメーカーとして、長い歴史をもつ「プーマ」。ファッションデザイナーとのコラボをいち早く行った革新派のスポーツブランドとしても知られています。1998年に「ジル・サンダー」とコラボレーションしたのを皮切りに、「アレキサンダー・マックイーン」「ニール・バレット」「フセイン・チャラヤン」など、ハイファッションのブランドと多くのスニーカーを発表しています。日本人デザイナー、ミハラヤスヒロとのコラボは、2000年にスタート。スポーツとモードを融合した、プーマのプレミアムラインとして世界中で人気を集めています。新作は、1960年代に誕生したプーマのアイコニックなスニーカーのひとつ、「プーマ スウェード」をドラマチックに前後で切り替えた、ミハラヤスヒロらしいデザインが特徴です。ヒールからシューレースにかけて、インパクトのあるフェイク・ファーをあしらったファッション性の高い逸品です。デザイナーの仕事を存分に感じさせる美しいスニーカーです。
白のファーの中には、ミハラヤスヒロのアイコン入りのコンチョボタンがあしらわれている。
定規で斜めに線を引いたように、ソールまで前後で切り替える。プーマの「フォームストライプ」のラインも途中で切れている大胆さ。

日本の老舗「オニツカタイガー」がつくった、名スニーカー

「オニツカタイガー」が生まれたのは、1949年。1951年に初めてつくったバスケットボールシューズには、土踏まず部分にトラの顔が描かれており、これが後にオニツカタイガーのトレードマークになりました。日本のスポーツシューズのパイオニアとして、長くアスリートを中心に愛用されてきた靴ですが、最近ではファッション関係からも注目を集め、イタリアの人気ブランド「アンドレア・ポンピリオ」とのコラボレーションも、今季で4シーズン目を迎えます。この「X-CALIBER(エクスカリバー)」は、1982年に登場したランニングシューズ「エクスカリバー」をデザインベースにしたもの。モデル名はアーサー王伝説に登場する剣の名前から採られています。全体のフォルムは、いかにも80年代のスニーカーを彷彿とさせるデザインで、「エアホール」が前後に入ったユニークなミッドソールが特徴的です。新色のこのモデルは、2色づかいのシンプルなカラーリングで、どんな着こなしにもマッチします。ほかにダークグリーンをベースにしたモデルもあります。
創業者・鬼塚喜八郎の「オニ」とアジアで最も強い動物「トラ」を合わせて、「強いイメージを」と、ブランド名とトレードマークが付けられた。
「オニツカタイガーストライプ」と呼ばれる、独特のサイドライン。色は鮮やかなエメラルド。