スリムな弟分が新登場した「リーバイス® 501®」、永遠の定番デニム三兄弟の秘密に迫る。

  • 写真:宇田川 淳
  • スタイリング:小林聡一郎
  • 構成・文:高橋一史

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最新と定番、どちらを選ぶ? Vol.01:おなじみの人気ブランドが展開する旬の最新アイテムと、あらためて見直したい定番アイテムをリサーチする連載シリーズ。第1回目は「リーバイス®501®」を取りあげます。

リーバイス®「501®SKINNY」

「リーバイス®」の数多いラインアップの中で、フラッグシップに位置づけられる品番が「501®」。股上がやや深く、前開きはファスナーでなくクラシックなボタン仕様で、腰回りのフィットは痩せ型から太めの異なる体型の人でも穿ける汎用性の高いもの。デニムらしさを物語るディテールをすべて兼ね備え、長年穿き続けることで表情が変化していきます。140年間以上もつくり続けられ、世界中から “ジーンズのオリジナル” 、“ジーンズのシンボル” として不動の地位を得ているこのマスターピースが近年、大きな動きを見せていることをご存知でしょうか? デニムという素材、デニムというアイテムへの注目度がファッションシーンで高まっている中、リーバイス®が選んだ道は、シルエットの見直しでした。2015年には裾幅が細いテーパードの「501®CT(シーティ)」が誕生し、今年2017年2月に足幅全体がスリムな「501®SKINNY(スキニー)」が仲間に加わりました。実は大元の太めな「501®オリジナル」も、時を経てモダンに移り変わっているのです。新連載「最新と定番、どちらを選ぶ?」のスタートとなる今回は、出揃った501®三兄弟の注目すべきポイントに密着します。

CONTENTS

1. 腰回りにゆとりがあり、足幅全体が細い「501®SKINNY」
2. 2015年に登場した、裾幅スリムのテーパード「501®CT」
3. 変化を続ける、永遠のスタンダード「オリジナル」
4. 2000年代の「リーバイス®」ヒストリー

腰回りにゆとりがあり、足幅全体が細い「501®SKINNY」

細いボトムとバランスのいいアウターは、オーバーサイズのブルゾン。今年らしいカラフルな色合いを取り入れて。
ヒップ下から裾まで続くスリムなシルエット。パンツ ¥12,960/リーバイス®(リーバイ・ストラウス ジャパン)、ブルゾン ¥43,200/オーラリー(クリップ クロップ)、ニット ¥19,440/クレープスキュール(オーバーリバー)、スニーカー ¥30,240/イン コンプリート コントロール(ワンダーラスト・ディストリビューション)、ブレスレット ¥30,240/エンド(ギャラリー・オブ・オーセンティック)、リング ¥11,880/イディアリズムサウンド(イディアリズムサウンド) ※問い合わせ先はページ下部をご参照ください。
腰周りは501®らしくゆとりがあるもの。ステッチはイエローとオレンジ混在のビンテージテイスト。
「501®SKINNY」。左 色落ち加工 ¥12,960、右 リジッドタイプ ¥19,440 /リーバイス®(リーバイ・ストラウス ジャパン)

「リーバイス®」の歴史の中で、“もっとも細い501®” と呼べる「501®SKINNY」が新登場しました。現代の男性のパンツの主流派になった細身のシルエットに即したアレンジです。'50〜'60年代のビンテージ501®を思い浮かべ、“501®=リラックスフィット” と認識している人は、「501®らしからぬカタチ」と思うかもしれません。リーバイス®には「511」という代表的なスリムモデルが存在しますが、比べてこのSKINNYは腰周りにゆとりがあり、ディテールも501®そのものです。穿いたとき洗練されたムードが出る、すっきりとしたレッグが最大の特徴。“スキニー” という言葉から連想される、足に貼り付くピタピタのパンツとは一線を画しています。

色落ち加工のモデルは素材に1%だけポリウレタンが加えられ、より楽な穿き心地を生むストレッチ仕様です。ただし見た目も感触も、引っ張れば少し伸びる点を除けば、通常のデニムと変わりません。生地の共同開発相手は、おなじみアメリカの「コーンミルズ社」。このこともフラッグシップである501®の証といえるでしょう。
ディテールや素材は、色や加工の違いにより多少異なり、もっともビンテージテイストなのは濃紺の「リジッド」。生地はストレッチ性のないコットン100%で、赤耳つき。リベットは本格的な打ち抜きタイプです。よりクラシックな味わいを求める人はこちらを選択するといいでしょう。


●問い合わせ先
イディアリズムサウンド TEL:03-5773-5070
オーバーリバー  TEL:03-6434-9494
ギャラリー・オブ・オーセンティック TEL:03-5412-6908
クリップ クロップ TEL:03-5793-8588
リーバイ・ストラウス ジャパン TEL:0120-099-501
ワンダーラスト・ディストリビューション  TEL:03-3797-0997

2015年に登場した、裾幅スリムのテーパード「501®CT」

テーパードなカタチは、着崩しドレスアップにも最適。今春流行のピンクのニットや革サンダルで上質な着こなしを。
太もも周りにゆとりがあり、印象はスリムでも穿き心地は快適。パンツ ¥14,040/リーバイス®(リーバイ・ストラウス ジャパン)、ジャケット ¥50,760/オールドマンズテーラー(ザ ディアーグラウンド)、カーディガン¥21,600/ノット メン(ジャンポールノット 青山店)、シャツ ¥28,080/バグッタ(トゥモローランド)、ベルト ¥4,320/ユナイテッドアローズ(ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館)、靴 ¥30,240/ポルペッタ(ビームスF 新宿) ※問い合わせ先はページ下部をご参照ください。
ボタンフロントのアタリがくっきりと。前開きがボタン仕様なのが501®流。
「501®CT」。左 色落ち加工、右 後染め加工 共に¥14,040/リーバイス®(リーバイ・ストラウス ジャパン)

2015年にテーパードシルエットの「501®CT」(=カスタマイズド&テーパード)が登場したとき、リーバイス®の会社に長く勤めるベテランスタッフでも、「驚いた」そうです。現行品として生産する501®を、リーバイス®自身がカスタマイズして裾幅を狭くし商品にすることが、革新的と考えられたからです。世の中の一般的なデニムの新作開発の視点で見れば、さほど珍しくないアレンジなのですが、それだけリーバイス®にとって501®は大切に守られてきた品番なのでしょう。

501®CTはスリムに仕立て直したデニムを穿く若者にインスパイアされた一本です。リーバイス®の直営店には「テーラーショップ」という、リペアやカスタマイズのコーナーを構える店舗があり(日本では『リーバイス® ストア 新宿』)、そこに持ち込んだデニムを細くする人が増えてきたことが開発のきっかけになりました。

これも「501®SKINNY」と同様に腰周りはゆったり。違いは、渡り(=太もも)幅が現行の501®とほぼ変わらずに太めということ。サイズをダウンさせて穿けば細くシャープに、アップさせて腰を落として穿けばビンテージのような着こなしができ、より多くの人が自分流のスタイルを楽しめます。


●問い合わせ先
ザ ディアーグラウンド TEL:0555-73-8845
ジャンポールノット 青山店 TEL:03-3486-2022
トゥモローランド TEL:0120-983-522
ビームスF 新宿 TEL:03-5368-7305
ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館 TEL:03-3479-8180
リーバイ・ストラウス  ジャパン  TEL:0120-099-501

変化を続ける、永遠のスタンダード「オリジナル」

スタンダードな「501®オリジナル」の紙パッチ。
濃紺の太めデニムは、スラックス代わりに穿ける一本。全身の色数を絞り、ダークシューズでパンツとつなげれば、シャープな脚長コーデが完成。¥12,960/リーバイス®(リーバイ・ストラウス ジャパン)、ジャケット ¥37,800/オーラリー(クリップ クロップ)、ニット ¥15,120/クレープスキュール(オーバーリバー)、ニットポロ ¥41,040/ジョン スメドレー(リーミルズ エージェンシー)、ベルト ¥10,800/デュバレー(ビームスF 新宿)、靴 ¥120,960/オールデン(インターナショナルギャラリー ビームス) ※問い合わせ先はページ下部をご参照ください。
「501®オリジナル」。リジッドタイプ ¥12,960/リーバイス®(リーバイ・ストラウス ジャパン)
洗濯で生地が大きく縮んだ時代の名残りのボタンフロントは、ファンが多いディテール。リベットが打ち抜き仕様なのも◎。
2011年以降、日本で販売される現行品のパッチはレザー製に。

「501®SKINNY」や「501®CT」が登場しても、ストレートシルエットの太めな「オリジナル」の存在価値は揺るぎません。永遠性のある定番デニム……とはいえ、実は現在も常にオリジナルのシルエットは見直され、変化を続けています。501®の役割とは、いつの時代でもデニム界の、「センター・オブ・センター」であること。世の中のど真ん中にあるデニム、それが501®です。

現行品は、2013年にシルエットが見直されたバージョン。ヒップ後ろのゆとりが削られ、すでに過去のモデルより直線的になっていた腰横の丸みが、さらにまっすぐになりました。よりすっきりと穿きこなせるモダナイズです。近年では、'03年、'08年、'13年と5年周期でシルエットが変わっています。とくに往年のカタチに似た腰横が丸く膨らむ '03年モデルと'08年以降では違いが顕著ですから、それ以前の501®を所有している人は、現行品と穿き比べてみると面白いでしょう。

戦前のモデルなど古いアーカイブを入手したい人は、「リーバイス®ビンテージ クロージング」という復刻ブランドがラインアップしている501®を購入するやり方もあります。特徴的な各年代のモデルがずらりと揃っている同ブランドの商品は、プライスは通常品の2倍以上しますが、古着マニアもうならせる凝った再現が行われています。


●問い合わせ先
インターナショナルギャラリー ビームス TEL:03-3470-3948
オーバーリバー TEL:03-6434-9494
クリップ クロップ TEL:03-5793-8588
ビームスF 新宿 TEL:03-5368-7305
リーバイ・ストラウス ジャパン  TEL:0120-099-501
リーミルズ エージェンシー TEL:03-3473-7007

2000年代の「リーバイス®」ヒストリー

501®オリジナルがアップデートされたときの告知ビジュアル(2013年)。
デニムをカスタマイズできる、「リーバイス® ストア 新宿」内の「テーラーショップ」(2012年オープン)。
商品企画やソシューリョン開発を行う研究所「ユーレカ・イノベーションラボ」設立(2013年)。
最新のコラボ、「リーバイス®メイドアンドクラフテッド®」×「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー」(2017年春夏コレクション)。

ここでは、あまり語られることのない、2000年代における同ブランドのクリエイティブな試みに目を向けます。

21世紀初頭は、世界中でファストファッションが台頭した時代。本格デニムを手掛けるリーバイス®には厳しい時期でした。そんな10年が過ぎた2009年に、とある新ブランドがデビューし話題になりました。名を「リーバイス®メイド アンド クラフテッド®」といい、同社の中でもっともモダンで自由なデザインを行うブランドとして現在に続いています。最新の2017年春夏では、パリコレ参加も注目される「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー」とコラボし、デニムジャケットの片側だけを黄色くペイントしたストリート感覚の服などを、カプセルコレクションとして製作しています。
コラボレーションは近年のリーバイス®を物語る一つの特徴でもあります。2012年には同じくアメリカのスポーツブランド「ナイキ」と共に、「511 スケートボーディング コレクション」をリリース。新たなマーケットを開拓しました。

同年の東京では、「リーバイス® ストア 新宿」内に、顧客の要望に応じてリペアやカスタマイズを行う「テーラーショップ」を常設。ニューヨーク、サンフランシスコ、ロンドン、パリに次ぎ、世界で5店舗目となるこのサービスにより、ファストな使い捨て感覚でなく、長く愛着を持てる特別な一本を求めるデニムファンとの関係が深まりました。
翌年の2013年には世界共通で、「501®オリジナル」のシルエットを見直すリニューアルも実施され、時代に即した商品ラインアップが整っていきました。

近年の同社の動きの中で、最重要の一つに挙げられるのが、2013年にサンフランシスコに誕生した研究所、「ユーレカ・イノベーションラボ」です。リーバイス®のクリエイティブの中枢となるこのラボで、日々新作が生まれ、既存品が改良され、サステイナビリティに関わるソリューションも考えられています。

目まぐるしく動く現代において、アメリカで一括してグローバル展開する道を選んだリーバイス®。新作の「501®SKINNY」で再び同ブランドに人々の目を向けさせたり、世界のモード関係者がいまもっとも熱い目線を注ぐ新鋭ブランド、「ヴェトモン」ともコラボしたり、未来を見据えた活動は、デニムの枠組みを大きく広げてくれそうです。

撮影協力:文化服装学院
資料画像提供:リーバイ・ストラウス ジャパン