【前編】お洒落を思いっきり遊ぶ、個性派メンズショップ「レショップ」の追っかけレポート

  • 編集・写真・文:高橋一史

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「ベイクルーズ」が服を愛するファッション通のために立ち上げた、ワクワクする東京・表参道のニューショップ「レショップ」。その誕生の軌跡に密着しました。

フランスの設計事務所による開放的なスペース

立地は「ドリス・ヴァン・ノッテン」や「リングヂャケット」のショップの並び。
入り口に飾られたふくろう人形は、バイヤー金子さんが探し集めたレアなディスプレイ。
ショップは縦に長い、地下1階〜地上2階までの3フロア構成です。企画から運営までを手がけたのは、「ジャーナルスタンダード」や「エディフィス」で知られる「ベイクルーズ」。この大きなグループ会社のスタッフが、「自分たちが買い物をしたいショップ」という想いを声に出して形にしたのが「レショップ」です。
入り口で出迎えてくれるのは、ふくろうをモチーフにしたヴィンテージのファッションドール(非売品)。とても精緻なつくりのミニチュア服を着た、ユーモラスなコスプレイヤー。時代や流行を超えて見る人を魅了するこのドールは、レショップが目指している世界をよく表しています。
2階から見下ろした様子。棚の靴は、ポップアップショップ開催中のアメリカ「Sabah」¥28,080
1階の奥左に設置された階段スペース
店内奥の階段によって、地下や2階に移動できます。階段の金属パネルや、1階の天井まで伸びる棚は、ドイツ人インダストリアル・デザイナーのディーター・ラムスが1960年にデザインした、「ヴィツゥ(VITSOE)」の「606 ユニバーサル・シェルビング・システム」。オフィスや家庭で用途に合わせて自由に組み合わせできる高級スチールラックが、伝統的なパリのエピスリー(惣菜店)を模した空間を表現するために採用されました。床には独自に着色したタイルが敷き詰められ、エピスリーのムードを高めています。ショップデザインは、パリのサードウェーブ系カフェ「クチューム」や、日本進出した「クチューム 青山店」も設計したフランスの「CUT architectures」が手がけました。
レショップ取り扱いの「ナイジェル・ケーボン × フレッドペリー」(私物)を着たバイヤー金子さん
品揃えのキーパーソンが、バイヤーの金子恵治さん。ベイクルーズの社員として「エディフィス」のバイヤーを務め、コアなファンが通い詰めたショップ「イーティーエス.マテリオ(ETS. MATERIAUX)」のバイイングも手がけた、服好きを唸らせる敏腕バイヤーです。金子さんはベイクルーズから離れて別の活動をしていましたが、このプロジェクトのために会社に戻ってきました。次ページから、金子さんと一緒にアイテムをチェックしていきましょう。

古着も扱う自由な発想の品揃え。

タキシードシャツふうに仕立てられたフランスの「アンタイトルド クロージーズ」。各¥46,440
レショップで扱われている約70ブランドのうち、20ブランドほどが日本初上陸です。オープンまで約半年という急を要したタイミングでの買い付けだったため、バイヤーの金子さんは逆境を逆手に取って独自のルートで世界各地からユニークなアイテムを見つけてきました。上の写真の黒麻のシャツは、パリのクリニャンクールにある古着店が手がけるハンドメイドのオリジナル商品。「インド人の店主の店で、古着を探してマーケットに行った時に出合いました。ひと目で気に入ってその場で商談。日本ではレショップだけの展開になります」
カバーオールジャケットなどフランスのワークウエアの古着を扱うコーナー。どれも状態がよいモノばかりで、プライスもリーズナブル。
古着を充実させた品揃えも金子さんならでは。ブルーの色が印象的なフランスのワークウエアは、レショップに欠かせない大切なコレクションです。「フランス人は作業着を買い替えず、直して着続けます。直した服が、意図せずにお洒落な服へと姿を変えたのが古着の面白さ。探し回ってなるべく安く買い付け、安い値段で提供しています」。レショップのフレンチワークウエアは、その多くが2万円以下のプライス。服好きの日本人から見て色落ちや補修ステッチにどれほど価値があっても、仕入れ値から大きく上乗せしないのがレショップのこだわりです。
イギリスの労働着であるショップコート。色バリエーションもあり、ディテールが異なっています。
金子さんが着たコート 。¥18,360
金子さんに着ていただいたのは、珍しいイギリス製のワークウエア。足首近くまである丈の長いコートで、精肉店の作業着などで使われてきたショップコートと呼ばれる服のデッドストックです。「“珍味”を扱うレショップらしいアイテム。前振りの袖など随所にイギリスらしいテーラリング発想が感じられます」。肩は狭めで、袖幅はダボッと太め。いまこそ着たい、と感じさせる魅力的なアイテムです。
今季のキーアイテムといえる、「リパーパス」のグルカパンツ。¥25,920
レショップだけのエクスクルーシブ・ブランドとして、「リパーパス」がスタートしました。古着のリメイク、高級ピマコットン生地のシャツなど幅広いアイテム構成です。上の写真の、旬のシルエットといえるワイドパンツは、デザインにユニークなストーリーがあります。「裾幅が広い伝統のグルカショーツの丈を、フルレングスに伸ばす発想から生まれた服です。好きな長さにカットして穿いていただければと思います。このパンツの生地はインド製のデッドストックで、色違いの白では品種改良した高級エジプト綿『フィンクスコットン』を用いています」

ユニークな目線の別注アイテム

形違いで展開している、「ラングラー」と「リー」のTシャツ。各 ¥7,020
ずらりと並ぶグレーとネイビーのTシャツは、「ラングラー」と「リー」への別注品。写真の棚の下に積まれているデニムのトートバッグも、別注ラングラーです。リーでは、なんと36〜40インチの極太サイズのみをオーダーした、ノンウォッシュの別注ジーンズもあります(下写真の店長が着用中)。Tシャツのデザインポイントは、希少価値のあるヴィンテージのモチーフ。リーの右上にあしらわれた「USA」のレタリングにグッとくる人も多いことでしょう。
アウター以外は店長・板垣さんの私服コーディネート。ビッグシルエットのデニムは「リー」。
「ビューティフル ピープル」別注アウター。¥49,680
店長の板垣宏明さんが、白サンダル+ソックス、デニムのワイドパンツなど流行の着こなしを取り入れた個性的なスタイリングを披露してくれました。着ているアウターは日本ブランド「ビューティフル ピープル」の別注品です。レショップが見つけたオランダのバティックプリントのデッドストック生地を彼らに提案し、撥水加工を施して小雨の中やリゾートで着られるフードつきアウターに仕上げてもらったもの。同素材のハットもあり、セットアップ・コーディネートも楽しめます。どこかアフリカの民族衣装を彷彿とさせる色柄です。この“アフリカ調”は最近のメンズトレンドでもあります。
美大出身の期待の新入社員、古明地さん。
今季らしい色を上品に組み合わせた新人ショップスタッフの古明地拓郎さん。白ボタンダウンシャツとカーキ(オリーブグリーン)のカーゴパンツ姿です。白とカーキのセットは、レディスの流行ともリンクする人気のコーディネート。襟元にバンダナを巻き、ボウタイのように白ビーズネックレスを重ねて、クリーンで知的なムードを漂わせています。ところで、この着丈の短い白シャツが気になる人も多いのでは? そんな方は、ぜひ次のページをご覧ください。

“普通”じゃない !? アイディア溢れる白BDシャツ4型。

超ビッグな別注「アウトドアプロダクツ」のバックパック、「リー」のワイドデニム、「カルティエ」のアンティーク・ウォッチ、イギリス「マーガレット・ハウエル」のシャツ、フランスのパンツ専業ブランド「ベルナール ザンス」などが並ぶ2階フロア。
広々とした2階のスペースで窓際のセンターに位置するのが、アメリカの老舗シャツブランド「セロ(SERO)」のボタンダウン・シャツです。レショップは、「オックスフォード生地の普通の白BDシャツは誰でも持っている」という前提で品揃えをしているため、スタンダードなデザインを取り扱っていません。シルエットやディテール違いで“着崩した”全4型のモデルはすべて別注品。ここにしかない、レショップらしさを代表するコレクションです。

店長の板垣さん、ショップスタッフの山下智章さんに、4型をすべて着ていただきました。
Type 4:ゆったりシルエットのショート丈。
Type 1:ノーマルボディで、襟が大きく首周りがゆるめ。
Type 2:ビッグシルエット(首周りはタイト)。
スタッフ二人が着ているのは、創業1929年のシャツ専業ブランド「SERO」の別注シャツ。各¥17,280
Type 3:スリムボディで、ドロップショルダーのロング丈。

着る人や選ぶサイズで異なる印象になるのがおわかりでしょうか? オーセンティックな白のBDシャツにもまだまだ新たな可能性があることを教えてくれる楽しい試みです。

たくさんの品揃えの中から、自分にフィットする服小物を見つけだす喜びを得られるメンズショップ、レショップ。今回の【前編】では言及していない地下のフロアも注目のスペースです。日本が世界に誇る化粧品メーカー「資生堂」の男性向けプレステージ・スキンケアライン「SHISEIDO MEN」が、百貨店以外で初めてのフルラインアップ展開を行っているのです。その詳細やショップづくりのエピソードは、近日公開の【後編】にて。どうぞご期待ください!(高橋一史)

L'ÉCHOPPE(レショップ) 青山店
東京都港区南青山5-5-4
TEL:03-5778-3522
営業時間:11時~20時
不定休


※レショップ青山店は、2015年9月18日付けで移転しました。
新住所:東京都港区南青山3-17-3 1階(電話番号、営業時間、定休日は変更なし)
http://lechoppe.jp/

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