北イタリアの古都に息づく、“本物”を志向するレザーバッグ

  • 写真:宇田川 淳(静物)
  • 写真:佐田美津也(取材)
  • コーディネート:松原加代子

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高品質のレザーを用いたハンドメイドのベルトやバッグで知られる「フェリージ」。北イタリアの歴史ある街、 フェラーラの本社&工場を訪れ、伝統的な製法と素材にこだわるものづくりをひも解きました。

右上から時計回りに:トートバッグ¥82,080、トートバッグ¥113,400、リュックサック¥129,600、ビジネスバッグ¥85,320、トートバッグ¥71,280/すべてフェリージ

ビジネスからカジュアルまで、シーンを問わず活躍するおなじみのベルト&バッグブランド「フェリージ」。高品質のナイロンとレザーを組み合わせた機能的アイテムが日本ではよく知られていますが、このブランドの本当の魅力はこだわりの「レザー」にこそあります。今回Penは、彼らの本拠地である北イタリアの古都、フェラーラを訪れて、製作過程のすべてを目撃、フェリージのキーパーソンであるCEOやデザイナーへのインタビューを行いました。ブランド創業時から受け継がれているユニークなものづくりと、今シーズンお薦めのアイテムを、たっぷりとご紹介しましょう。

※各アイテムの詳細はこちらのページをご覧ください。

本物の革の魅力を引き出す、特殊な製造技術とは。

フェラーラ中心部の風景。ルネサンス期に栄えた城跡を囲む市街地で、住人たちはゆったり時を過ごす。
現在はフェラーラ郊外にあるフェリージ本社。工場とオフィスがひとつの建物に収まり、職人とCEOが同じ時間を共有している。革の裁断を行う工場は別棟で隣接。

ボローニャから北東へ約45㎞。ルネサンス期に栄え、歴史と文化に彩られた古都、フェラーラ。中世の趣をいまも残すこの地に、日本でもおなじみ「フェリージ」の本拠地があります。

「フェラーラはゆっくり時が流れる街です。流行に敏感な土地ではありません。だからこそ、私たちも見た目に偏らないものづくりを心がけています」

そう語るのは、43年前にこの地でフェリージを創業し、現在もCEOを務めるアンナリサ=フェローニ。日本から訪れたわれわれを自ら案内し、ブランドの歴史や哲学を語ってくれました。

アンナリサ=フェローニ(フェリージCEO)。大学時代に趣味から始めたレザーのベルト製作が好評となり、1973年に協同経営者と「フェリージ」ブランドを立ち上げた。その後、バッグなどを手がけるようになり、世界的に知られる人気ブランドへと育てあげた。

フェリージといえば、ナイロンとレザーを組み合わせたバッグが思い浮かぶでしょう。しかしブランドのDNAをより濃く反映しているのは“オールレザー”のアイテムです。しかもその革は、イタリアの伝統的製法によるヴェラ・ペッレ、“本物の革”なのです。

「こだわっているのは、ペッレ・ベジターレ(ベジタブルなめしレザー)。いまは化学的に加工した革がいろいろあるけど、昔ながらの技術でつくるこの革こそ、歴史を備えた本物の革なのです」

ハンドルのコバ塗り作業を見守るアンナリサ(右)。こうして工場に足を運び、職人と過ごす時間を大切にしているという。現場との 距離感の近さが、高い品質を支えている。
昔ながらのミシンが並ぶ工場の様子。「タンタン、タンッ」と、一針ひと針ていねいに縫う音が心地よく響く。整理整頓が行き届いているのも、アンナリサのモットー。

フェリージでは、仕入れた革の裁断から組み立てまで、すべての工程を自社で行っています。工場はオフィスと棟続きになっていて、アンナリサも毎朝、必要な連絡をすませると、すぐにここへ足を運びます。各工程をくまなくめぐり、職人の仕事ぶりを観察し、気になることがあればその場で声をかけていくのです。「私は自分の仕事を愛していますし、この場所が本当に好きなんですよ」

工場に足を踏み入れて、すぐに気づくこと。それはフル稼働中であっても、意外なほど静かなことです。「手作業がメインですし、大きな機械もありませんから。みんな難しい作業をしているので無駄なおしゃべりをしませんし」とアンナリサ。

ミシンを使い手作業でハンドルをつくる工程。技術的な難度は高く、熟練した職人の腕があって可能となる。

一見してわかる通り、花形機械は昔がらのミシン。大量の発注をさばく大がかりな設備などはなく、職人たちが一つひとつの工程をていねいに進めています。しかもここでは、ある特殊な製法がとられています。

「バッグをつくる際、一般的には糊を使うのですが、うちはほぼ“糊なし”でつくっているのです」
素材を糊で固定せず、職人が腕で補いながら縫い上げるという、技術的に困難な手法を採用しているのです。
「こうすると、シルエットも革の動きも全然違う。より自然で、時とともに革が成熟し、表情が豊かになるのです」
フェリージのバッグには、実はこうした決定的な違いが隠されています。しかもそれは、長く使えば使うほど差が出るというものなのです。
「越えなければいけない壁は多いのですが、これを行っていることがフェリージの、私たちの価値なのです」

特徴的な刻印を押す工程。一点一点、ていねいに作業される。
別棟にある革の裁断工場。クセがつかないよう、バケッタレザーが平積みで保管されている。

流行を追いかけず、価値が長く続くのが「フェリージスタイル」

デザイナーのドメニコ・ベルトラーニ。96年から所属し、現在のラインアップをつくりあげてきた。「ライフスタイルの変化に常に気を配り、新しいニーズをすくい上げています」
愛用のノートとマーカーでデザインを行うドメニコ。頭に浮かぶイメージを描き出し、修正していく。「小さなディテールが一つひとつ積み重なって、フェリージとなるのです」

フェリージを支えるもうひとりのキーパーソンが、デザイナーのドメニコ・ ベルトラーニです。コレクションのコンセプトから既存品のアップデートまで仕事は多岐にわたりますが、重要なのは、「フェリージのスタイル」を常に具現化していくことだといいます。

「流行を追わず、時のなかで生き続ける。改革はするけれど、価値が長く続くのがフェリージのスタイルです」

デザインをする際は、いつも携えているノートにデッサンを手描きして、アイデアをかたちにしていきます。製造の現場に頻繁に足を運び、職人からのフィードバックで仕様を微調整していくのだそう。バッグからインテリア小物まで、多彩な製品群を常にアップデートさせていますが、その情熱の根幹にあるのは、革への尽きない愛情です。

「私自身も小さい頃から革が好きで、革を触っているとつくりたいものが浮かんでくる。革はわたしにとって、インスピレーションの源なのです」

ドメニコがフェリージに加わったのは、約20年前のこと。当初、ブランドのヘリテージに圧倒されたといいます。

「そして徐々に、フェリージのDNAに吸収されていきました。ヘリテージから感じとったアイデンティティを崩さぬように気をつけながら、時代に合わせて進化させてきたのです」

常に意識しているのは、昔ながらの革にこだわりながらも、決して古臭くならないようにすることだそう。

「昔ながらの素材をどうやって現代に合わせていくか。しかもいまだけでなく、将来的にも持ち続けられるものにしなければなりません。それが私たちの挑戦なのです。

フェリージの肝であるベジタブルなめしの「バケッタレザー」。革の素性がよくわかる、裁断前の状態。加工技術が進化した現在、これだけの品質の革を使うのは非常に贅沢だという。
オフィスの一角に展示されているヘリテージピース。創業当初は靴用のミシンしかなく、太い糸でバッグを縫いあげていたという。長い時を経た革の風合いが非常に魅力的。

「時を超えた価値」に出合う、ミラノの旗艦店。

今季の新作バッグが並べられた店舗奥の空間。床材は大聖堂と同じ大理石に真珠母貝を混ぜたもの。テーブルはフランス人デザイナー、J.D.ブラッサールのヴィンテージ。 壁には真鍮のプレートが配されている。

「フェリージを手に入れるなら、やはりイタリアがいい」という人にお薦めしたいのが、このミラノ本店です。ロケーションは高感度エリアとして知られるブレラ地区の一角。ファッションはもちろん、インテリアショップや香水の専門店などライフスタイルを彩る店が並ぶ通りに、昨年4月、待望の旗艦店として誕生しました。

白を基調とした空間には、上質なウッドの什器と真鍮のパーツが随所に配され、シンプルで機能的、モダンでありつつ伝統的な「フェリージらしさ」 が表現されています。そこに彩りを加えているのは、アンナリサが選んだヴィンテージ家具です。時代を超えたクリエイションに敬意を払う姿勢が、こういったところからも見て取れます。また、 ミラノの象徴であるドゥオモ(大聖堂) と同じ大理石をわざわざ探し、フロア材に使っているのも面白いところです。

国籍や年代を問わずさまざまなお客様が訪れているそうで、ウォレットやキーホルダーなどの小物から旅行用のボストンバッグやトロリーまで、本国らしい豊富な品揃えを誇っています。なかでも充実しているのがフェリージの原点であるレザーベルトと、こだわりのバケッタレザーを全面に使ったアイテムです。日本未入荷の品も見つかるので、ミラノを訪れた際にはぜひ、立ち寄ってみてください。

店舗手前の空間。カラフルなレディスのバッグが両面の壁に飾られ、中央の什器にはウォレットやカードケースなど小物が収まる。
店の中心に置かれているのは、フェリージのオリジンであるベルトのコレクション。真鍮製フレームのスライド式什器は特注品。
ブレラ地区に立つ店舗の外観。控えめなたたずまいにもかかわらず、色鮮やかなアイテムが通りかかる人々を店内にひき込む。

Felisi Milano
住所:Via Fiori Chiari 5, 20121 Milano Italy 
TEL:+39-02-4953-3420

こだわりのレザーを用いた、新作&定番バッグ。

フェリージのバッグの揺るぎない魅力とは、デザインや機能、クオリティが優れていることだけでなく、すべてのバッグにつくり手の尽きない情熱が表れていることでしょう。フェリージの誇る豊富なラインナップはすべて、時間をかけて生み出された名品ばかりと言えるでしょう。その名品揃いのラインナップのなかで、今シーズン特にお薦めしたい5つのアイテムを紹介します。

エレガントな佇まいと、使い勝手のよさが魅力のトートバッグ。
斜め上から見た様子。開口部のストラップに注目。

まず一つ目は、ドラム処理でシワと柔らかさを表現した、シュリンクレザーを用いたトートバッグ。細身のショルダーストラップは男性でも肩がけ可能な長さがあります。ライトブラウンの革を用いたエレガントな佇まいと使い勝手のよさが魅力です。上の写真のような舟形から、開口部に設けられたストラップを外すとスクエアなシルエットにも変化します。トートバッグ「15/20/NK+DS」(W40×H31×D15 cm)¥82,080

やわらかなシュリンクレザーを用いた、シックな黒のトートバッグ。
開口部には、バッグのフォルムを変化させるストラップが備えられています。

続くこちらは、同じくシュリンクレザーを使用した存在感あるトートバッグ。独特のやわらかさ、使いこんだような自然なシワが、男心をくすぐるアイテムです。開口部は開閉がしやすいマグネット式で、上の鞄と同様に間口のストラップで、スクエアから台形へとフォルムが変化。ハンドルは長さの調整が可能で、こちらもやはり、男性が肩がけできる長さになっています。トートバッグ「11/83 /1/NK+DS」(W42×H34×D24 cm)¥113,400

ハンドルから左右に広がっていく2本のラインが特徴のニューモデル
開口部は余裕のある大きさで、荷物の出し入れも容易なつくり。

3点目となるこちらは、今季からラインナップに加わった新作コレクション。アーカイブにあるドクターズバッグから想起したデザインで、ハンドルから左右に広がっていく2本のラインが特徴。クラシックな雰囲気を現代的にリファインさせた、フェリージらしいデザインです。ツイル生地をコーティングしたボディは、摩擦に強くウォータープルーフ機能も備えています。トートバッグ「16/38/PF+A」(W40× H31 × D14cm) ¥71,280

ビジネスシーンで重宝する機能的なブリーフケース。
前後に設けたオープンポケットなど、機能を重視したデザイン。

そしてこちらは、ビジネスユースを想定した機能的なバッグ。黒一色でまとめられたストイックな雰囲気も魅力的です。前後に設けたオープンポケット内側には小分けポケットを備え、ジップを開閉せず収納物を出し入れ可能。ボディはコーティングツイルでハンドルやボトム、トリミング部分にバケッタレザーを使用。底鋲が打たれているため、鞄を地面に置いても安定し、鞄が傷むことがありません。ビジネスバッグ「1731/PF+A」(W41 ×H29×D11cm)¥85,320

ショルダーにも、リュックにもなる2ウェイバッグ。
ストラップの長さを調整すれば、リュックにもトートバッグにもなるデザイン。

最後にお薦めするアイテムは、リュックやトートとして使える2ウェイバッグ。今季のニューモデルです。アーカイブから想起した円形のバックルがクラシックな雰囲気を漂わせています。ソフトで軽量なキップレザーを使用し、上部を絞るとリュックとしても使用でき、長さを調整するとショルダーストラップにもなるユニークなデザインです。リュックサック「16/35/LD」W30×H36×D15cm)¥129,600

問い合わせ先/フェリージ 青山店 TEL:03-3498-6912  www.felisi.net