EXILE TETSUYAさんプロデュースのAMAZING COFFEEへ、作原文子さんと遊びにいく。

  • 写真:永井泰史
  • 文:山田泰巨

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昨年秋、中目黒にコーヒースタンド「AMAZING COFFEE」をオープンさせたEXILEのTETSUYAさん。TETSUYAさんとは旧知の仲であるインテリア・スタイリストの作原文子さんとともに、彼がプロデュースするコーヒースタンド「AMAZING COFFEE」にお邪魔しました。

AMAZING COFFEE前で語らうTETSUYAさんと作原文子さん。

EXILE やEXILE THE SECOND・DANCE EARTH PARTYでのパフォーマンスはもちろん、ダンストレーニングを中心にフィジカルトレーニングなどを行うEXILEパフォーマンス研究所の所長、自身が所属するLDHの飲食部門LDH kitchenのスタッフなど、活動の幅を広げているTETSUYAさん。そして、本誌をはじめさまざまな雑誌や広告でのスタイリング、ショップのディスプレイなど多岐にわたり活躍するインテリア・スタイリストの作原文子さん。ふたりが旧知の仲と聞くと驚きを感じるひとも多いかもしれません。

その出会いはTETSUYAさんが、作原さんが仲間たちと行うイベント「mountain morning」を訪れたことにあるといいます。昨秋、中目黒にオープンしたTETSUYAさんのコーヒースタンド「AMAZING COFFEE」は、作原さんとの出会いも大きなきっかけのひとつとなっていると聞き、作原さんとともにTETSUYAさんを訪ねました。

珈琲でつながる友人たちと、AMAZING COFFEEをつくりあげていった。

跳ね上がったエントランスの扉を持ちあげるTETSUYAさん。もちあげた扉中心についている六芒星のエンブレムはAMAZING COFFEEの至るところで使用されている。

もともとシトロエンの貨物自動車「Hバン」を移動販売車にして、AMAZING COFFEEを運営していたTETSUYAさん。インテリアや雑貨への関心が高いこともあり、知人に連れられて作原さんが行う「mountain morning」のポップアップショップ会場に足を運びました。mountain morningとは、作原さんが親交の深いフォトグラファーとポストカードセットを製作したことからスタートしたプロジェクトで、インスタレーションやポップアップショップ、オリジナルプロダクトの制作などを手掛けています。

「会場には漠然と欲しかったようなものがあまりにたくさんあるので驚きました。その時に買ったものは自宅ではもちろん、AMAZING COFFEEでも使っています」

それをきっかけに、2015年12月に代官山T-SITE GARDEN GALLERYで開催された「mountain morning “WHITE”」にAMAZING COFFEEも参加することに。真冬の開催だったため、会場脇にもちこんだ移動販売車でスタッフが震えながら珈琲を淹れ続けたと言います。


作原さんが持参した「mountain morning」のポートフォリオを見ながら、当時の話で盛り上がるふたり。
写真は当時、バンで移動営業をしていたAMAZING COFFEE。12月の寒空の下、多くのお客さんで賑わいました。おそらくTETSUYAさんプロデュースのコーヒーショップと知らずに購入した人も多いことでしょう。

「会場で設営や販売をしている私たちに、TETSUYAくんやスタッフの人達がいつも気さくに珈琲を差し入れしてくれて。それがおいしくて温かく、うれしかったです。そして、やりたいことに一生懸命に挑む姿に勇気をもらいました。私もmountain morningはいつも手探りの状態でやっていて、時に自分がいいと思うものも、他の人の共感はなかなか得られないのではないかと不安になったりもします。TETSUYAくんが参加してくれたときも、製作の過程で悩んだアイテムがあったけど、自分の感覚を信じて作ってみたらたくさんの人が手にとってくれて。信念をもって続けることの大切さをあらためて感じた瞬間でした。そしてなによりも、TETSUYAくんやスタッフのみなさんが楽しんで参加してもらったことで仲間意識みたいなものがいまもあります」

「人とのと触れ合いって波長が合うなということがありますよね。互いの世界観が歌のようにハーモニーを奏でる瞬間があるというか。mountain morningの会場で珈琲を販売しながら、会場にいるお客さんたちと興味を共有する喜びを感じました。その強い手応えでAMAZING COFFEEをもっと広げていけると確信したんです。作原さんにもらった縁がきっかけになって、漠然と思い描いていた店を本格的に始めようと思うようになりました」

跳ね上げ式のエントランスは、この春から暖かい日には解放したいとTETSUYAさん。入り口前の木を取り囲むカウンターで楽しむのもいいかもしれません。機械仕掛けのような仕掛けが随所に隠れており、TETSUYAさんの男子心が見え隠れします。
店内中央のカウンター。店内に席はないため、持ち帰りのみ。中目黒散策のおともにぴったりです。

珈琲というたったひとつのもので人とつながる楽しみを実感したTETSUYAさんは、その後すぐに行動へと移します。TETSUYAさんはどのように「AMAZING COFFEE」を思い描いていたのでしょうか。

「もともとは、ガレージのような珈琲屋をやりたかったんです。以前使っていたバンをそのまま店内に持ち込みたかったけれど、面積の問題で諦めることにしました。内装は、バンの内装もやっていただいた作庭家でツリーハウスビルダーの四方谷毅さんと鍛造作家の四方谷礼子さんにお願いしました。映画の『スタンド・バイ・ミー』が大好きで、映画の中に出てくるツリーハウスに憧れがあって」

ツリーハウスは店内はいってすぐ右手にロフト型の倉庫として実現。オリジナルでつくった跳ね上げ式のエントランスは暖かくなるこれからの季節はフルオープンにすることも考えていると言います。

「エントランスからカウンターまでは、クルマで進むようなイメージの空間です。ただあくまで一方通行ではなく、世界観を知ってもらうために細部に仕掛けをしました。マウンテンモーニングの会場で写真とグリーンのある空間で珈琲をやりたいと強く思ったんです。店内には緑があって、音にもこだわりたい。あまり気づいてもらえないけれど、入り口では鳥のさえずりが流れ、出口では水の音が流れているんですね。入った瞬間に森を感じられたら」

こちらがエントランス。木の上のスピーカーからは鳥のさえずりが。森の中を歩くように楽しんでほしいという思いが込められています。
こちらは出口。ここでは水の音が流れています。柱に設置されたゼンマイ仕掛けの装置はエントランスの跳ね上げの仕組み。ここを回転させると扉がゆっくりともちあがっていきます。

店内は空間に限らず、TETSUYAさんがこれまで出会ってきたさまざまな友人や尊敬する先輩たちが力を貸してくれたそう。たとえばレジカウンターやエントランスに描かれたグラフティは友人の手によるもの。エプロンはロサンゼルスを拠点に活動する、リメイクアイテムで知られるアーティスト「Dr. Romanelli」が、TETSUYAさんの仲間であるEXILE NAOTOさん(EXILE/三代目 J Soul Brothers)のファッションブランド「SEVEN」の生地をリメイクしてつくってくれたと言います。スタッフのTシャツはNIGO®さんのHUMAN MADEのものです。みな、珈琲好きというひとつの共通点から協力の輪が広がっていったといいます。

エントランスのガラスに描かれたグラフィックは友人の手によるもの。
同じくこちらのカップに描かれたイラストも友人の手によるもの。

そもそもこうして店として発展したきっかけは、TETSUYAさんが珈琲を振舞っている姿をみたEXILE HIROさんが、事務所内にカウンターをつくって社員のみんなが楽しめるようにしたらいいんじゃないかと提案があったことだといいます。

「その時はうれしくって、資材屋を巡って板を選んで、色を塗って、インパクトドライバーでとめて。(LDHに置かれている)自作したカウンターはいまも大好きですね」

そのときから続けてきたことがようやく形になったと言えるでしょう。

TETSUYAさんが身につけているエプロンが、Dr. Romanelliさんによるリメイクアイテム。

珈琲から学んだのは、求められた時にさっと手を差し伸べるようなホスピタリティ

店内を案内するTETSUYAさんと話しを聞く作原さん。背景に描かれたクルマのイラストが、以前より使われているバン。

そもそもTETSUYAさんが珈琲にはまったきっかけも、とある友人の影響によるものといいます。その友人とは恵比寿の人気珈琲店、猿田彦珈琲の大塚朝之さんです。

「大塚くんから珈琲屋を始めたという連絡をもらって遊びにいったことがきっかけだったんです。実はそれまで珈琲が飲めなかったんですよ」と驚きの告白をするTETSUYAさん。カフェモカだったら飲めるかなと大塚さんに伝えたところ、騙されたと思ってブラックの珈琲を飲んでみてほしいと言われ、その味がTETSUYAさんの思いを変えました。

「素直に感動したんです。たった一杯の飲み物で感動することにも驚きました。そしてそれをきっかけに自分でも珈琲をいれてみたいと思うようになったんです。そこで大塚くんに相談をして道具を揃えてもらい、まずは手挽きで淹れ始めてみたらどんどん楽しくなってしまって」

いまではツアー中も道具をもっていき、毎朝ミルで手挽きして飲むほどだと言います。

「自分の店の豆も自信をもって薦めますが、日本のいろいろなところにおいしい豆があります。ツアー中もよく買い巡っていますね」

いろいろと道具を集め始めるようになったTETSUYAさんは、自然が好きなこともあり山や森で遊ぶ際に自分で入れた珈琲を友人たちにふるまうようになっていきました。そしてある日、EXILEのメンバーとの打ち合わせにも差し入れることに。

カップの入る木箱など、細部まで友人たちと作り込んでいったといいます。

「はじめのうちは淹れてきたからどうぞという感じだったのが、テーブルに置くとみんなが手に取ってくれるようになった。押し付けるんじゃなくて自然と手を伸ばしてくれるようになった時はうれしかったですね。こだわりをみせびらかすんじゃなくて、人から求められた時に手を差しだすことで世界は広がるんだということを珈琲から学びました」

作原さんもその思いに共感し、先日訪れた西海岸のアートブックフェアでの体験を例に挙げます。

「ロサンゼルスの会場の誰でも気軽に入れる感じがとても気持ち良かったの。いろんな感度の人が集まり、国籍も年齢も性別もこえて、その場所と時間を楽しんでいる。それってとてもいいなと思って。たくさんの人のアートに没頭する姿が印象的だったし、何よりそこに溢れていた笑顔の数の多さに驚いて。とても公共性の高い場所で、自分のエゴを出さずに偶然歩いていた人との出会いが大切にされている。それが今回の旅で素敵だなと思ったことのひとつかな」

「東京は人も多いし情報も多い。人と密な関係を結ぶ難しさもあります。けれど音楽やダンスがぼくの人とのつながりを広げてくれました。珈琲はその延長にあるように感じています。AMAZING COFFEEはいまのぼくの手が届くものを集めて形にしたようなところがありますね。夢と現実の共存。夢を感じてもらう場を現実にどう根付かせるか、その挑戦をしているという面もあります」

奥に見えるのは歴代のグッズ。現在は残念ながら販売終了しています。

珈琲マイスターの資格をとり、AMAZING COFFEEという場もつくったTETSUYAさん。知識を得るのは楽しいけれど大切なことは別にある、と話を続けます。

「もちろん珈琲好きの仲間で集まれば、標高何メートルにある農園の豆がすごいなどといったマニアックな話で楽しむこともあります。でも僕にとって重要なのはどんなふうに珈琲を楽しめるかということ。たとえば作原さんがウィンドウディスプレイを担当するFoundMUJIに遊びにいくとエントランスで作原さんを感じることができます。ぼくもAMAZING COFFEEに遊びにきてもらうことで、なにかを感じてもらえるような店を目指したい」

「AMAZING COFFEEは体験できるコーヒースタンドだよね」と、作原さん言います。

「どういう豆かではなく、どういう時間を過ごせるか。それは私が携わるインテリアにとってもとても大事なことだと思う。どのデザイナーでいつどのようにデザインされたか。それは知識としてのおもしろさはあるけれど、それだけでインテリアを楽しむのはもったいないなって」

「考えることも多いけれど、一方で直感も大切にしたい。いろいろな人と話を重ねてものをつくっていく楽しさを感じています。ぼくはいま36歳で、これからどんな風に大人の魅力を重ねていけるかを考えなくてはいけない時期。いい人々と出会ってかき混ぜられてできてきたAMAZING COFFEEの世界は、ぼく自身にとっても大きな糧になっています」

AMAZING COFFEEはゲストをもてなす場所とTETSUYAさんは語ります。

TETSUYAさんにとって、それはあらゆる活動につながっているといいます。この春に行われたツアーではよりパフォーマンスに力を入れ、ソロでタップダンスを披露するコーナーも。

「ぼくたちの仕事はもてなすことが基本です。HIROさんがいつも言うのは、パーティーにおけるホストとなって、ホスピタリティをもってゲストをもてなすということ。ぼくにはそれが珈琲につながっているんですね」

次回のmountain morningは、AMAZING COFFEEとのコラボレーション?

作原さんにおすすめの珈琲を淹れるTETSUYAさん。初心者にも楽しめる酸味を抑えた珈琲をまずは淹れてくれました。

まだまだ話は尽きませんが、ここでTETSUYAさんに珈琲をいれてもらうことにしました。準備を始めたTETSUYAさんに、作原さんから質問が投げかけられます。

「私は酸味のある珈琲も好きなんだけど、まわりに酸味が苦手な友人も多くて。そんな人にはどんな珈琲がおすすめかな?」

「焙煎が深いものを選ぶといいですね。最初に好きな珈琲をみつけて、そこから広げていくのがいいと思います。少しずつ幅を広げていくと、不思議なことに焙煎の浅いものも楽しめるようになりますよ」

そんな会話を受けTETSUYAさんが作原さんに出したのはエチオピアアレカ。すっきりしていて優しい酸味と作原さんは驚きます。TETSUYAさんが、実はAMAZING COFFEEで出すものも同じように酸味が少ないものを選んでいるといいます。

この日は、AMAZING COFFEEのほか、TETSUYAさんが最近お気に入りの豆からも淹れてくれました。
飲み比べることで味の違いが明確に。酸味の少ない珈琲のフルーティーな味わいに作原さんも驚きます。

「僕らのファンが訪れてれくれることもあり若い世代のお客さんも多い。となると珈琲初心者も多いので、間口が広いものを出すことでまずは珈琲を好きになってもらいたい」

店のオープンに合わせて買ったマシンは、シトロエンのバンと同じ色で注文したものといいます。珈琲をいれつつ、「車1台が買える値段だったのでドキドキでしたよ」と笑いながら振り返るTETSUYAさん。ほかにも何層ものフィルターを通して軟水になる浄水器など機材にこだわりをみせます。だけど、という前置きとともに「お店をつくってわかったのは、AMAZING COFFEEだけど珈琲は主役じゃないってことですね」とTETSUYAさん。

「それはなんとなくわかるな。ここはおおらかに人を受け止めてくれて、ふらっと入ってこれる気持ちのいい場所」と作原さんが共感します。TETSUYAさんも「実際に近所の人もやってきてくれて、それがとてもうれしい」と続けます。そして、ここでTETSUYAさんから提案がありました。

おすすめの淹れ方や、近頃気になっている珈琲談義をひろげていくふたり
珈琲をいれる道具にもこだわり、自宅にもさまざまな道具があふれかえるといいます。

「ここでmountain morningをやりませんか?」

「え!それはうれしいな。TETSUYAくんは写真も好きだと聞いたけど展示はやらないの?」

「実はDream Aya(E-girls)×AMAZING COFFEEの写真展を開催していました。PHOTOGRAPHERの顔も持つAyaちゃんのイラストとコラボレーションにして、オブジェをつくったりしてもおもしろそうだなと思いを巡らせているところです。クリエーションがいくつも生まれるそういう場所にしていきたいんです。実は作原さんのmountain morningでの体験を経て、ものの求められ方も考えるようになったんですね。ぼくが珈琲の世界に恩返しできるのは、やはり多くの人に豆を楽しんでもらうこと。その人のライフスタイルの隣にあるものであってほしい。そうすると、毎日手に触れられる珈琲周辺のグッズなどをつくれないかとも考えています」

「TETSUYAくんの架空の部屋をつくるってアイデアもいいかもしれないね。わたしはTETSUYAくんの世界観を届けるお手伝いならできると思う。TETSUYAくんが自分の世界をこめて、空間が一人歩きできるような。そもそもAMAZING COFFEEはすでにTETSUYAくん個人の魅力があふれているものね」

「僕の名でファンがきてくれるのはとてもうれしいけど、いつか僕の名前が薄れてAMAZING COFFEEという名前がもっと前に出てきてくれるといいな。みんなが喜んでくれる珈琲の世界を、もっと深めていきたいですね」

AMAZING COFFEE

東京都目黒区青葉台1-18-7カスタリア中目黒1階6区画
営業時間:10時〜20時
不定休
www.amazingcoffee.jp
Instagram @amazing_coffee_official