Tsukasa Kondo

Tsukasa Kondo / Actor / Writer
近藤 司/役者/脚本家

兵庫県神戸市出身。2008年渡米。以後東京とNYCを中心に役者/脚本家としての活動を続ける。最近ではYouTube上で全6話が公開されているWebドラマ「2ndアベニュー」の脚本を担当し、役者としても出演をしている。モットーは「よく食べて、よく寝て、二度寝する」。

2ndアベニュー第一話 http://youtu.be/9jbXtOYNS1w
公式ウェブサイト http://www.tsukasakondo.com

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続・なぜ渡辺直美はアメリカ人を感心させるのか

続・なぜ渡辺直美はアメリカ人を感心させるのか
この記事は『なぜ渡辺直美はアメリカ人を感心させるのか』の続編となっています。ご覧になっていない方はまずそちらをお読み下さい。

上の記事では、渡辺直美さんのビヨンセ芸を例に、見た目を笑いのネタにすることが日本のテレビから消えるという予言をしました。

たくさんの方から賛否両方のお言葉を頂き、すべて真摯に受け止めさせていただいています。
残念ながら一部の読者の方は私が渡辺直美さんを批判していると受け取ったようで、それは私の狙いではなかったのでもう少し説明をさせていただきたいと思います。

見た目を笑いのネタにすることが日本のテレビから消えるという予言。

これは私が「そうなって欲しい!」と言っているわけでも、「アメリカが正しい!」と言っているわけでもありません。

単純に地上波テレビがスポンサー企業からお金をもらって番組を作っている以上絶対に起きることです。

なぜなら「見た目を取り上げて笑いのネタにする」という芸が、地上波テレビのビジネスモデルと非常に相性が悪いからです。

今回は渡辺直美さんの別の作品を使って、なぜそうなるのかの説明をしたいと思います。

こちらはYouTubeで見つけた『史上空前!! 笑いの祭典 ザ・ドリームマッチ』(2013)という番組で発表された彼女のコント作品です。



コントの内容は、旅館の宿泊客の男性に、渡辺直美さん扮する旅館の娘さんが挙動不審にアプローチするというもの。
渡辺直美さんの顔は真っ黒なメイクで塗られており(色黒な日本人という設定だそうです。)、髪も天然パーマ風の短髪。
相部屋相手がかわいらしい女性だと思っていた男性は、まったく想像していなかった彼女の黒人風の見た目にビックリします。

渡辺直美さんの登場から観客は爆笑します。その後もお二人の息の合った掛け合いで最後まで観客を笑わせ続け、見事ベストカップル賞を勝ち取った作品です。

この作品を楽しんでいるファンの方は黒人を馬鹿にしているつもりは全く無いでしょう。渡辺直美さんも、誰かを差別するつもりは全くないと思います。
続・なぜ渡辺直美はアメリカ人を感心させるのか
しかし大事なポイントは、楽しんでいる人/作っている人がどう思っているか、ではないんですね。

テレビというビジネスにおいて大事なのは「スポンサー企業がどう思うか」です。

同じコントを、違う視点から見てみましょう。

日本に住む、黒人系ハーフの娘さんを持つ家庭がこの番組を見たとします。そしてその子どもが肌の色が原因で学校でいじめを受けていたとします。
彼らがこのコントを見て

「なんで登場した瞬間に笑いが起きるの?」「肌が黒いとかわいくないっていうこと?」
「黒人を笑い者にしてもいいというメッセージを送っている。」「これが原因で学校のいじめがひどくなる。」

と思ったとしましょう。自分自身が黒人系でなくとも、友人、家族、恋人に黒人系の人がいる人は日本にもたくさんいます。
このコントが、不快なメッセージを送っていると彼らが感じることもあるかもしれません。(私が彼らを代弁することはできませんが、いたとします。)

そして彼らが番組のスポンサー企業に苦情を送ったとします。今であればただ企業にメールや電話をするだけでなく、ツイッターやフェイスブックでそれについても書くでしょう。
その苦情に一定の説得力があった場合、スポンサーが無視することはとても難しいです。企業イメージや商品の売り上げのためにテレビに広告を出しているわけですから。
もしかしたら番組のスポンサーをやめるかもしれません。
続・なぜ渡辺直美はアメリカ人を感心させるのか
「差別だ」「不快だ」というクレームを無視するためには、芸人側ではなく、スポンサー側に確固とした信念がないといけないわけです。

そうすると「見た目を取り上げて笑いのネタにする」という芸が、地上波テレビのビジネスモデルと非常に相性が悪いのが分かりますか?

誰しも自分の見た目には敏感です。ましてや身長や体格、肌の色など生まれた時から与えられた特徴であればなおさら、テレビで扱われると敏感に反応するのは自然です。

そのような「苦情が来やすい」ジャンルの笑いを積極的にサポートする理由はスポンサー側にはあまりないですね。そこで前回の予言になるわけですね:

これからどんどん人種や文化が多様になっていく日本において、特定の見た目を取り上げ、笑いのネタにする芸はテレビから少しずつ消えていきます。

東京都では新しく生まれる赤ちゃんの19人に1人は外国系の血をひいています。(出典:多民族文化社会における母子の健康に関する研究、2002)

「日本人っぽくない」見た目の日本人は今後ますます増えていきます。そして彼らの友人、恋人、親戚、家族、ビジネス相手もどんどんと増えていきます。

2020年には東京オリンピックのために、世界中から何十万人もの旅行客が日本を訪れるでしょう。彼らの多くが宿泊先で日本のテレビを見るのではないでしょうか。

そして忘れてはいけないのは、日本の地上波テレビ番組のスポンサーをするような大企業は、ほぼすべてがグローバル企業です。(トヨタ、ソニー、キャノン、、、)
彼らは日本だけでなく、世界全体における企業イメージを向上・維持しないといけません。多くの企業が、収益の大部分が海外での事業を占めています。

これから日本の芸人たちは、日本にいながらにして、世界のPC(政治的な正しさ)スタンダードを要求されるという過酷な時代に突入していきます。

大人気で過酷なスケジュールの中アメリカ留学を決断した渡辺直美さんには、それを鋭く察知した、他の芸人さんたちにはない先見の明があるのではないでしょうか。
続・なぜ渡辺直美はアメリカ人を感心させるのか
さて、以前書きました「政治的な正しさに応えながら刺激的なコンテンツを作るために」という記事では、PCの圧力がありながらも、どうやって刺激的なコンテンツを作るか、という点に関して書きました。

たとえば、社会的に権力を持っている存在や組織を馬鹿にしたり、もしくはいじめっ子・悪者のように思われている存在(アメリカではタバコ会社はよく笑いのネタにされます。)を馬鹿にするようなネタはアメリカではよくあります。

そうでなくても、「PCについて分かってますよ」という点が明らかになっている作品は、多少の苦情を受けても生き残っているようです。

PC自体を笑いのネタにしたもの、スポンサーの存在自体をパロディとして扱う笑いも、アメリカでは人気です。

私自身は渡辺直美さんはすごく才能のあるエンターテイナーだと思っています。
そこで彼女を主人公にしたPC対応のコントを書いてみました。
こちらをクリックしてお読み下さい。『渡辺直美に捧げるPCコント

気に入って頂けると幸いです。
では、ご連絡お待ちしています。

近藤司

tsukasa.penmag@gmail.com


p.s.黒人ハーフのお子さんを持つ家庭から実際に苦情のメールを受け取った、黒人ハーフ芸人ぶらっくさむらいさんのこちらのブログ記事も合わせてお読みください。
http://ameblo.jp/takeuchigo/entry-11609044903.html

出典:定住外国人の子どもの教育等に関する政策懇談会
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kokusai/008/shiryou/__icsFiles/afieldfile/2010/02/05/1289866_1.pdf

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