Naoko Aono

Naoko Aono / Writer
青野 尚子/ライター

アート、建築関係を中心に活動しています。趣味は旅行と美術鑑賞と建築ウォッチング。ときどきドボクも。共著に「新・美術空間散歩」(日東書院本社)。

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建築好き必見!「岡本太郎×建築」展

建築好き必見!「岡本太郎×建築」展

会場中央の《太陽の塔》と万博の大屋根の模型。大屋根を突き破ってそびえ立ちます。

川崎市岡本太郎美術館で7月2日まで開催中の「岡本太郎×建築」は、太郎関係だけでなく建築関係の資料も充実しています。1950〜70年代の日本の建築に興味のある人には必見の内容になってます。わりとどこから見てもいいフレキシブルな会場構成になってますが、まずはやっぱり《太陽の塔》からコンニチワ。

建築好き必見!「岡本太郎×建築」展

パリ時代の坂倉準三と岡本太郎。1930年代。二人とも若い!

建築好き必見!「岡本太郎×建築」展

竣工当初の太郎邸と模型。模型は横浜国立大学の学生がこの展覧会のために制作したもの。

岡本太郎が建築家とつきあうきっかけになったのは戦前のパリで、当時ル・コルビュジエの事務所に在籍していた坂倉準三と出会ったことだと思われます。戦後、太郎は東京・青山に自邸兼アトリエ(現・岡本太郎記念館)を建てますが、この設計は坂倉準三でした。

この家はレンズ型の屋根が特徴です。これは飛行機の翼の構造を参照したもので、内部は中空になってます。なぜそうしたかは不明です。デザインが面白かったからか、軽量化を図ったのか。

建築好き必見!「岡本太郎×建築」展

奥の白いレリーフが旧都庁壁画のレプリカ。その左下にあるのは犬の形の植木鉢。太郎が、丹下の娘さんの誕生日に贈ったものだそう。

建築好き必見!「岡本太郎×建築」展

旧都庁壁画アップ。文字や記号が書かれてます。

丹下健三とのコラボレーションはよく知られています。会場には旧都庁のレリーフ壁画のレプリカが展示されています。旧都庁を取り壊すとき、本物の壁画から型をとって作ったもの。後に再製作できるよう、番号などが書き込まれています。結局このレリーフは再び作られることはなかったのですが。

建築好き必見!「岡本太郎×建築」展

〈国立代々木競技場〉ができるまでを追うコーナー。50年以上前の大工事が甦ります。

太郎は丹下が設計した〈国立代々木競技場〉にも壁画を制作していました。会場には体育館の模型や建築中の写真、映像が並びます。この中でも、体育館の施工を担当した清水建設の記録フィルム「かわった形の体育館」は必見です。二重吊り橋構造という空前絶後の構造による大空間を短期間に仕上げたプロセスを追っています。太いワイヤーの張力との闘いなど、思わず手に汗を握ります。

建築好き必見!「岡本太郎×建築」展

太郎が旅先で撮った写真。彼は写真も好きで、大量の写真を残しています。

太郎の旅の写真も面白い。日本やヨーロッパで撮った写真からは、太郎が何を見ていたのかがわかります。会場構成を担当した建築家の藤原徹平さんは「視点が面白いですよね」と言います。

「道をたくさん撮っているのが印象的です。また、ル・コルビュジエの写真はほんの1,2点しかないのに、無名の人や群衆はたくさん撮っている。とくにこの写真の上にある5枚は面白いです。事件か病人が出たので野次馬が集まってきて救急車が到着し、人が運び出されていくところまでを連写している。太郎はこんなことに興味を持っていたのか、と思いました」

建築好き必見!「岡本太郎×建築」展

〈デッブス邸〉浴室で。お湯は入っていないようですが、「いい湯だな」ふうの太郎。

アントニン・レーモンドと太郎とは世代も作風も違いますが、彼らがコラボレーションした記録が新しく発見されました。もともと川崎市岡本太郎美術館には謎の写真があったのですが、この展覧会を準備していたときにレーモンド事務所から図面が見つかり、全体像が明らかになったのです。この物件は〈デッブス邸〉という住宅。太郎は浴室のバスタブと壁面の装飾を担当しました。写真を見るとなかなか入り心地がよさそうです。

建築好き必見!「岡本太郎×建築」展

右が太郎の「いこい島」、左が丹下の「東京計画1960」。遠目にも雰囲気が全然違います。右はゆるくて、左はかっちりしている感じです(笑)。

建築好き必見!「岡本太郎×建築」展

1964年、自身の展覧会会場で丹下を迎える太郎。この会場構成を担当したのが磯崎でした。

太郎は「いこい島」というレジャーランドのような人工島を考えていました。橋で東京とつながった島には広場や美術館、ホテル、音楽堂、野球場などが作られます。ビーチもあります。面白いのは競馬場まであること。教育的なものからそうでないものまでがごちゃっと一緒くたになった印象です。

「遊びから都市を造ろうとした感じです。それに対して丹下健三の『東京計画1960』はより官僚的ですよね」と藤原さん。

この「いこい島」の計画を作るにあたって太郎が丹下に相談したところ、丹下は自分が忙しかったのか、当時研究室にいた大学院生の磯崎新を太郎のアトリエに送り込みます。太郎は磯崎とともに「いこい島」のスケッチを完成させました。

「いこい島」では広場をはさんで競馬場と美術館が隣り合っています。競馬場でアツくなったオヤジが美術館になだれ込む。「芸術も交通もエンターテインメントも混ざり合う。太郎は、そんな混乱が招かれることが重要だと考えていたのではないかと思います」と藤原さんは言います。

建築好き必見!「岡本太郎×建築」展

右が太郎「明日の神話」、左が磯崎新のヒロシマをモチーフにしたドローイング。なお、前に置いてある太郎の「座ることを拒否する椅子」には実際に座れます。

「磯崎さんは太郎の一番の理解者だったのでは、と思う」と藤原さん。そこで磯崎が描いた「ふたたび廃墟になったヒロシマ」のドローイングと、太郎の「明日の神話」の下絵を並べました。「明日の神話」はビキニ環礁事件などが下敷きになった絵です。磯崎と太郎、二人が描いた終末が隣り合っています。半世紀前の貴重な資料を含め、岡本太郎という巨人を通して戦後日本の建築史の新しい断面が見える展覧会です。

「岡本太郎×建築」は川崎市岡本太郎美術館で7月2日まで。5月13日から6月3日まで、藤原徹平さんが司会を務めるレクチャーシリーズも開かれます(要予約)。

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