Naoko Aono

Naoko Aono / Writer
青野 尚子/ライター

アート、建築関係を中心に活動しています。趣味は旅行と美術鑑賞と建築ウォッチング。ときどきドボクも。共著に「新・美術空間散歩」(日東書院本社)。

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残り1週間! 見ないと後悔するクラーナハ展

残り1週間! 見ないと後悔するクラーナハ展

右がルカス・クラーナハ(父)《ホロフェルネスの首を持つユディト》、左は同じくルカス・クラーナハ(父)《洗礼者ヨハネの首を持つサロメ》。

東京展は1月15日までなのですが、やはりどうしても言いたいので書きます。国立西洋美術館の「クラーナハ展」がすごい件です。

何がすごいかというと、右の《ホロフェルネスの首を持つユディト》、実物を見て驚愕しました。展覧会のキービジュアルになってるので印刷物では何度も見ていたわけですが、本物はユディトの肌の色艶が全然違う。どこのコスメ使ってるんですか、とか、エステに行ったんですか、とか聞きたくなるレベル。

この絵は3年がかりの修復を終えたばかり、というのもあるのですが、日本が誇る印刷技術をもってしても再現できない色香というか、あでやかさは本物でないとわかりません。となんだかセクハラ親父みたいになってきましたが、とにかくそれぐらい違うのです。

もう一つ、写真がないですが、《泉のニンフ》という絵もエロいです。何がエロいかって横たわるほとんどヌードのニンフの背景に、ぽっかりと口を開けた洞窟から一筋、わき出る泉が描かれているのです。これがもう最高に(ますます危険な人になりそうなので以下略)。


残り1週間! 見ないと後悔するクラーナハ展

こちらはクラーナハではなく、レイラ・パズーキ《ルカス・クラーナハ(父)《正義の寓意》1537年による絵画コンペティション》という作品。

残り1週間! 見ないと後悔するクラーナハ展

左がルカス・クラーナハ(父)《正義の寓意(ユスティティア)》。

この「クラーナハ展」が面白いのはピカソや森村泰昌など、近現代のアーティストがクラーナハからインスピレーションを得た作品が一緒に並んでいること。同じような絵が大量に並んでいるのは1977年テヘラン生まれのレイラ・パズーキの作品。実は中国に、世界の複製画の半数以上が作られるという有名な芸術家村があり、この絵はそこでクラーナハの《正義の寓意》の写真を渡して7時間以内にという条件のもと、複製画を作らせたものなのです。コピーのレベルは「まあ許せる」というものから「これはひどい」までいろいろです。

そもそもクラーナハもそれなりの規模の工房を運営し、ある意味では似たような絵を量産していたので、レイラ・パズーキの作品はそのあたりの制作システムに対するアイロニーともとれます。

展覧会のサブタイトル「500年後の誘惑」はクラーナハの絵に漂うエロティシズムから来ています。そのエロスがまた屈折しています。女性はヌードに見えて、薄いベールをまとっているものが多く描かれます。まるっきり裸、よりもさらにエロティシズムが醸し出される仕掛けです。解剖学的にはあり得ない人体表現もエロ度を高めます。身体のパーツを強調、あるいは省略することでより魅力的に見せる方法は現代の美少女アニメにも通じます。この屈折具合がいかにもドイツだなあ、という気もします。

「クラーナハ展 500年後の誘惑」は2017年1月15日まで国立西洋美術館で、1/28~4/16に大阪の国立国際美術館で開催されます。とにかくこれは見るべきです。

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