Naoko Aono

Naoko Aono / Writer
青野 尚子/ライター

アート、建築関係を中心に活動しています。趣味は旅行と美術鑑賞と建築ウォッチング。ときどきドボクも。共著に「新・美術空間散歩」(日東書院本社)。

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毛利悠子さんグランプリ「日産アートアワード2015」

毛利悠子さんグランプリ「日産アートアワード2015」

毛利悠子「モレモレ:与えられた落水 #1-3」

先日行われた「日産アートアワード2015」で毛利悠子さんがグランプリに選ばれました。日産アートアワードは2年おきに開かれている現代美術の賞。日本のアーティストがグローバルに活躍するのを後押しするのが目的です。今回は第2回目。1回目はこんな感じでした。

毛利悠子さんグランプリ「日産アートアワード2015」

毛利さん作品。漏れた水が循環していきます。

毛利さんの作品は「モレモレ東京」というフィールドワークがもとになってます。駅とかでよく、漏れてる水をビニールやバケツ、ペットボトルで誘導している装置がありますよね。あれは水がお客さんにかからないように駅員さんが奮闘してるわけですが、その神経が実に細やか。おもてなしの心と素人でも巧みにそんな装置を作ってしまう器用さとで、”芸術家なき芸術”になってます。毛利さんはその創意工夫を作品にしました。ピタゴラスイッチ的な仕掛けで、水が循環するようになってます。枠の大きさはデュシャンの「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」(通称「大ガラス」)という作品と同じ大きさ。タイトルの「与えられた落水」(Falling Water Given)はデュシャンの遺作「(1)落ちる水 (2)照明用ガス、が与えられたとせよ」へのオマージュです。

この作品は実際に水漏れを生じさせ、それに対処する、という形で制作されてます。なので制作中は床が水びたしだったそう。ときどきバケツからざっぶーん、と水を浴びてしまうという「ドリフみたいな」(毛利さん)アクシデントにも見舞われたとか。最初から水が循環する回路を設計したわけではないところも、作品のコンセプトの一部です。

毛利悠子さんグランプリ「日産アートアワード2015」

久門剛史さん「Quantize #5」

このアワードでは一般の来場者の投票で決める「オーディエンス賞」というのがあり、今回は久門剛史さんが選ばれました。奥の丸いオブジェには秒針だけ残した小さな円が大量にとりつけられていて、時を刻んでいます(秒だけですが)。久門さんは一時、サラリーマン生活をしていたことがあり、そのときの記憶からこの作品が生まれたそう。

毛利悠子さんグランプリ「日産アートアワード2015」

岩崎貴宏さん「リフレクション・モデル(羅生門エフェクト)」

毛利悠子さんグランプリ「日産アートアワード2015」

岩崎貴宏さん「アウト・オブ・ディスオーダー(70年草木は生えなかったか?)」

広島出身の岩崎貴宏さんは黒澤明の映画「羅生門」に登場する壊れた羅生門のオブジェと、人毛(!)で作ったオブジェを出品しました。羅生門は戦乱や災害で荒廃した世界の象徴です。人毛のオブジェは広島の地図を現したもの。広島に原爆が投下されたとき、「このあと70年は草木も生えないだろう」と言われたことがもとになってます。実際にはそんなことはなかったわけですが。

毛利悠子さんグランプリ「日産アートアワード2015」

毛利悠子さんグランプリ「日産アートアワード2015」

石田尚志さん「正方形の窓」

横浜美術館での個展の記憶も新しい石田尚志さんは窓が落ちていくような映像を展示。江戸川乱歩の短編がもとになっているそう。私が彼の作品を初めて見たのは横須賀美術館でのグループ展でした。その衝撃は今も忘れられません。今回の新作もテンションが高いです。

授賞式にはカルロス・ゴーン氏も出席。「ビジネスを軌道に乗せることができたら、次はその利益を社会に還元すべき」という考えから始めたそう。

「日産アートアワード2015 ファイナリスト7名による新作展」は12月27日までBankART Stduio NYKで開催されています。

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