Makoto Sasaki

Makoto Sasaki / video director/ movie director
佐々木 誠/映像ディレクター/映画監督

98年より音楽プロモーション映像やテレビ番組などを演出。ドキュメンタリー映画とドキュメンタリー風のフィクション映画も監督している。今まで撮影で訪れた場所で好きなのはケニアとインド、そしてハワイ。
http://sasaki-makoto.com

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蜃気楼の舟

蜃気楼の舟


竹馬靖具監督は、日本映画界において非常に面白い存在だ。


無名の舞台俳優だった竹馬監督が「出たい映画がないから」自分で制作した、鮮烈なデビュー作『今、僕は』(09)は、自身が演じるひきこもりの青年の日常をドキュメントタッチで綴り、ラストに深い余韻を残す傑作だった。



よくダルデンヌ兄弟の作品と比較される本作だが、それは題材へのアプローチの仕方が近いだからだろう。


社会派として知られるダルデンヌ兄弟だが、「社会問題」を描くことにあまり興味がない、と私は思っている。

その現場の「リアル」を描くことだけに執着している。

彼らにとってその「問題」がなにかは一番重要ではない(と思う)。

そこが竹馬監督と共通している。

『今、僕は』が素晴らしいのは、その切り取られた「リアル」がちゃんとその地方都市の問題、日本が抱える身近な暗部を浮き彫りにさせていることだ。

ド素人の舞台俳優だった若者がはじめて作ったとは思えない、恐るべき完成度の作品だった。

『今、僕は』1月30日(土)特別上映



その竹馬靖具監督、7年ぶり待望の新作『蜃気楼の舟』が明日から公開する。

田中泯が主演し、坂本龍一がテーマ音楽を提供した、ハードボイルドとファンタジーが入れ混じったジャンル不明、簡単にアート作品とも括れないまったく新しい映画だ。



本作は、社会問題となっている「囲い屋」(年老いたホームレスを連れ去り生活保護費を奪いとる若者たち)の実態を題材にした作品ではあるが、例によって竹馬監督はこの問題を訴えたいわけでない。

そこを誤解して観ると、驚愕の展開に戸惑うことになる。


「囲い屋」の一味である主人公がかつて自分を捨てた父親を偶然「囲う」ことで、己自身と対峙する、という物語だが、その物語ですら重要ではない。


この饒舌ではない作品を構築しているのは、田中泯の圧倒的な身体性、小水たいがの無骨な佇まい、足立智充の謎めいた存在感、タルコフスキーやアントニオーニを彷彿とさせる佐々木靖之の映像美。その全てが登場人物の内面に存在する「リアル」を剥き出しにし、現代の「闇」を炙り出している。


乾いた欲望、憎しみ、恐怖、そして憧憬——渦巻く感情の湖を「舟」はどう渡るのか。

それぞれの舟に乗って劇場で“体験”するべき映画だ。


蜃気楼の舟

(2015/99分/1:1.85/カラー&モノクロ/5.1ch/DCP)

明日から渋谷アップリンクて公開。

監督・脚本:竹馬靖具 
撮影:佐々木靖之 
照明:關根靖享 
助監督:池田健太 
編集:山崎梓、竹馬靖具 
録音:上條慎太郎
整音:鈴木昭彦 
効果:堀修生 
スタイリスト:碓井章訓 
ヘアメイク:寺島和弥
プロデューサー:竹馬靖具、汐田海平
テーマ曲「hwit」(坂本龍一『out of noise』より) 
音楽:中西俊博 
製作:chiyuwfilm 
出演:小水たいが、田中泯、足立智充、小野絢子、竹厚綾、川瀬陽太、大久保鷹、中西俊博、北見敏之、三谷昇 他

配給:アップリンク

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